新ひょうたん島「三つの国籍」

 人は必ず三つの国籍を持つことにしたら、世の中どう変わるでしょう?う〜〜ん、書いてみないとわからない。。。
 脳みそストレッチと思って妄想してみます。

 ストレッチって痛いけど、終わった後気持ちいいんですよね〜。

 つまっていた血管やリンパ腺がいっせいに開通したような爽快感が「フゥ〜〜」という吐息とともに生じます。

 これから書き始めるこの文章、はたしてストレッチになるのやら?

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三つの国籍

 ある日、ガバチョ大統領は勝手に宣言しました。

 「今日から新ひょうたん島の全島民は、三つの国籍をもたねばならな〜〜い」



 博士がさっそくたずねます。

 「ガバチョ大統領、どうしてそんなこと決めたんですか?」




 サンデー先生もたずねるというか、迷っているように言いました。

 「どんな基準で選べばいいのかしら」




 ダンディーは独り言をつぶやいているようです。

 「ふん、いいアイデアじゃね〜か。俺はいつもガンマンの国ヤンキーアメリカにあこがれていたし、かといってこの島も捨てがたいと思っていたからな〜。でも三つは多すぎるぜ」




 子供たちは騒ぎました。

 「あ〜〜、だからもっと勉強しとけばよかったんだ。。。広い地球の水平線に僕らを待ってる国がある♪っていったて、どんな国があるのか知らないよ!」

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 ガバチョ大統領はちょっと高い場所に立って話を続けました。

 「さて諸君、三つの国籍とはいったいなんでやねん?とお迷いのことでしょう。エッヘン」

 「私は小さい島の大統領ですが、これからの世界は大きい国より賢い国のほうがエライんです」

 「そこで、私は賢い国の賢い大統領として世界に影響を与えたいと思ったのであリま〜す。オッホン」

 トラフグさんがヤジを入れます

 「なんだ、そりゃ単なる売名じゃね〜か?」




 ガバチョ 「いいえ、トラフグ君、しっかりとした内容がありますから決して売名なんかじゃあ〜りませ〜ん」

 サンデー先生  「それじゃ大統領、その内容とやらをわかりやすく聞かせてほしいわ。でも私は必ずフランスと決めてますから。あしからず」

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 ということで、新ひょうたん島のみんなは島の公会堂に集まってガバチョ大統領のお話を聞くことになりました。

 ガバチョさんの話をここにまとめておきましょう。

 さ〜て皆さん、ちょっと長くなりますけど辛抱してくださいよ。

 私は長年国と国が争うのが嫌で嫌でたまりませんでした。

 そこで変わり者で、偏屈者で、へそ曲がりな私は、南太平洋からプカプカと流れてきたこの島を買いとったんです。

 プカプカ漂流する島なら、エンジンや帆をつければ好きなときに好きな場所に行けそうだし、国と国の争いにも巻き込まれにくそうだしって、考えたんであります。

 ご先祖がけっこうな遺産を残してくれておりましたので、ま〜なんとか。

 それがこの島「新ひょっこりひょうたん島」のルーツでありま〜す。

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 長い漂流中、魚釣りなんぞしながら、世の中についてあれこれ考えてました。

 ひょうたん島じゃ、なんとかかんとか皆が仲良くやっているよな〜。そりゃ小さな喧嘩はしょっちゅうあるけど、人殺しなんて絶対ありえない。世界はどうしてそうならないんだろう?

 そしてハットひらめいたんです!

 国ってやつがどうしても頭から離れないのが現代の人間ってやつだ。自分の国が正しい、自分の国が美しい、自分の国が一番だ。。。なんでもかんでも自分の国だらけ。。。

 それなら一人一人が自分の国を増やしたら、増やした分だけ正しいのも美しいのも一番なのも増えるんじゃないか?

 そのうち、あれ?、結局どこの国も考えることは一緒なんだって、比較したり自慢したりがばかばかしくなるんじゃないかとね。

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 そこでこんなガバチョプランを持って国連に行ってくることにしたんです。

 一、地球上の人間は必ず三つの国籍を持つこと

 一、生まれた国と自分が好きな国、そして親か先生推薦の国

 一、三つの国に人は5年周期で移住すること
 たったこれだけ。

 親か先生が推薦する国の基準はこうですぞ。

 「この人が役に立つであろう国、またはこの人の傾向と反対の国」

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 どうなるかって?

 5年ごとに移住するんですぞ。

 移住先を住まいやすくしようとみんな必死に考えますよ。

 子供なんか、親が何も言わなくたって外国語を覚えますよ。

 人の行き来も盛んになって、無理なお祭りやらなにやらしなくたっていいでしょう?

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 えっ? 風土が合わない人とかもいるんじゃない?

 そこは、それぞれの国に支店みたいな地域をつくるとか、国籍変更できるようにするとか、ローテーションを変更できるとか、いろんな工夫が必要にははなるでしょうな〜、きっと。

 もっともっといろんな問題はあるでしょう。

 でもですよ、皆さん。大事なのは、一人一人が三つの国が母国だって意識を持つことにあるんですから、それを実現できる工夫なら何でもありでしょう。

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 こうなっちゃ困るのが武器産業とかですよね。戦争とかテロとか減っていくでしょうからね。

 でも、戦闘機や戦艦を輸送機や輸送船に転換すれば何とかなると思いますよ。

 技術が育たないって。

 そんなことないんです。5年周期なら次来る人たちは前もって勉強してくるし、それなりに引き継ぎがスムーズな社会になっていきますよ。

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 あんまり「たったひとつ」にこだわるのはどんなもんでしょう?

 親だって母親、父親と二人いるじゃないですか。

 「母校」なんか小学校から大学まで、多い人なら四つも五つも持ってるじゃないですか。

 「一人一人に三つの祖国」、慣れればきっと楽しいんじゃないかな〜と、ドン・ガバチョはワクワクしてるんですよ。

 (テーマソングが流れてくる)

 ♪ 悲しいこともあるだろさ、さびしいこともあるだろさ、だけど僕らはくじけない〜 泣くのはいやだ笑っちゃおう 進め〜ひょっこりひょうたん島、ひょっこりひょうたんじ〜〜ま〜〜 ♪

 「人間とは境を引く生き物なり」と古代の書物に書かれていたそうです。

 線引きの本能、昔なら「身分」とか「藩」とか。それらがなくなったと思ったら「会社」とか「国」とかにチェンジ。

 そして今、あらゆる「国」がそれぞれの「正義」や「誇り」や「成長」やらで、日々対立を増しています。

 そうならざるを得ない本能は、人類の持って生まれた「業」としてしょうがないかもしれません。

 そしてその必然の結果は歴史が示すとおりです。

 だからこそ「本能の暴走をできる限り抑制していこう」、「本能の流れに抵抗していこう」とすることこそが「理性」だと思うんです。

 そのためには「境」を意図的に変えていくことも大事じゃないのかな〜

 たとえ祖国が三つであろうといくつであろうと、自分自身はたった一人。地球もたったひとつ。自然が変わるわけでもありません。

 境を引きたければ、自分と他人、人類と他の生き物、地球人と宇宙人にしたっていいじゃないですか。

 どうしていつまでも「国だ」「誇りだ」って群れるのでしょうか?

 『誇り、誇りと埃だらけの奴が言い』

どうせ誇るなら「群れ」を誇るより「個人」を誇るほうがいいし、どうせ境を引くなら「きな臭い境」より「あったかい境」のほうがいいと私は思うんですがね。

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 →新ひょうたん島「隣組復活」