設立してから考える

 「NEET株式会社」という会社を知りました。逆転の発想だらけでびっくりしました。若い頃の私だったら同じことをしたかもな〜、なんてつい微笑んでしまいました。
 昨日ある方と親しく会話中、彼の友人が起ち上げた「NEET株式会社」というとても不思議な会社について教えていただきました。

 まずは会社名でガツンと来ました。

 「おっ!、非正規雇用の方々の新しい模索だな。大事なことだし、興味がわくな〜」

 中身を聞いてびっくりしました。

 何を行うか決めずに、まず会社を設立したらしいんです。

 さらに、この会社は全員が出資者でかつ全員が役員らしい。つまり社員はいないらしい。その数なんと175名。

 何回かみなで集まり、あとはSNSなどを活用しながら何をするかを決めていくのだといいます。

  →NEET株式会社


2013年10月31日 読売新聞

全員がニートで取締役の会社、11月設立へ

 メンバー全員が「ニート」(若年無業者)で、株主で取締役という「NEET株式会社(仮称)」が11月に発足する。「これまでの働き方とは違う可能性を探りたい」という新しい試みで、30日に東京都内で、会社発足のための押印式が行われた。

「幕末の脱藩浪士のように新しい思考で」

 NEET株式会社の構想は1月ごろ、持ち上がった。1990年に人材コンサルティング会社ワイキューブを起業して倒産させ、現在は中小企業経営者によるNPO組織「中小企業共和国」代表などを務める安田佳生さんが、人材組織コンサルタントの若新雄純さんに「準備費用は出すから、何か新しいことはできないか」と声をかけたのがきっかけだ。若新さんはそこで、「経済成長が終わった転換期、幕末の脱藩浪士のように新しい思考で働き方を考えられるのではないか」と思い、NEET株式会社プロジェクト運営委員長を引き受けた。

 インターネットなどで呼びかけたところ、6月の説明会後の申し込みが全国で約500人に上ったうち、本名を名乗った約340人が当初の正式メンバーとなった。

主導権争い、けんかを経て175人が残る

 7月以降、「自分たちで仕事を作る」ことに向けて月1回の顔を合わせたミーティング、インターネット上のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やネット電話スカイプなどで話し合いを重ねた。その途中で、主導権争いやけんかも珍しくなかったという。そのうち、冷やかしや「従業員になりたい」などというメンバーは去り、現時点で175人体制になっている。グループで起業のアイデアを練っており、既にTシャツ作製や「女の子の部屋の空気の缶詰」など30から40の案が出てきているという。

 ニートは英国から導入された概念だが、現在の国の定義では、15歳から34歳までの働かない男女のうち、通学も家事もしていないものとされ、2012年には全国で63万人、同年齢人口の2.3%いるとされている。しかし、この会社の参加資格は「ニートの条件にだいたい合致する方」で、アルバイトなどで働いていたり、家事をしていたりと必ずしも定義通りではない。

 メンバーは同時に株主でもあり、ひとりが500円の株を12株持ち、6000円の出資となる。これを集めた100万円強の資本金で税理士の顧問料など最低限の費用をまかなう。ネットやクラウドファンディングを活用し、活動費用や運営リスクを極力抑える予定だ。

 上下関係はないが、会社の形式上、若新さんが代表取締役になる。ただし、任期1年。若新さんは「思ってもみない、とんでもない切り口のアイデアで新しいものを生み出していく集団になってほしい。そのため、指示・命令系統や厳密なルールも作っていない。僕は何も押し付けない。今後何ができてくるか、それは彼ら彼女ら次第」と話している。
押印式には「なぞの群衆」

 「いよいよ、就任承諾書と定款委任状にハンコを押すことになりました、イエーイ!」若新さんの掛け声に、会場から拍手がわき上がる。

 30日午後2時過ぎ、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターの一室。11月21日に設立予定の「NEET株式会社」の定款委任状への押印式には、約100人の男女が集まっていた。この日会場に来られない人などを含む175人でのスタート体制を整える日だ。

 近畿地方から参加していた男性(25)は大卒後、就職活動に失敗し、「既存の採用活動に疑問を感じて」参加。首都圏の女性(27)は「アルバイトしているが、面白そうだから来ている」。2浪して大学受験をあきらめ、現在は都内で一人暮らしの男性(21)は「ここに来て、いかに自分が主観でしかものを見てないかわかった。友達ができてエンジョイしている」と話す。
 →全員がニートで取締役の会社、11月設立へ

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 私が考える「半勤め人社会」「新自営社会」「半自給自足社会」「個農社会」のひとつの実践モデルになりそうな気がします。

 もうひとつ、私なら「自然の中の仕事場」という要素を入れたいな〜と思いました。

 コンクリートの壁、液晶の画面、タイプ会話から生まれる物はどこか薄っぺらい、と思うからです。

 まるで「中の絵が複製で額縁だけ立派な手作り」みたいな感じになってしまいがちですから。

  →「孟母三遷」の社会

 斬新な額縁をみんなでつくったこの会社、ぜひ生き物の原点「自然」を忘れずに「みんなの幸せ商品」を開発していってほしいものだと思います。

 世には二つのベンチャーがあると思うんです。

 ひとつは「額縁」を作るベンチャー

 もうひとつは「絵」を描くベンチャー

 今の世の中は「額縁」つくりだけをめざすベンチャーが多いと思います。

 しかし、世に本当に必要なのは、中身の「絵」を描くベンチャーだと思うんです。

 「額縁」とは「しかけ」、中身を考えずに、変えずに、金儲けのしくみをつくることです。

 「絵」とは「理念」、従来のしくみも利用して、その中身を変えることです。

 「絵」とは「人にとって善きこと、美しきこと」です。

 「額縁」をつくるのはたやすく、「絵」を描くことは難しい。

 「絵」のない「額縁」は無意味です。

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 古典的な論集、笠(りゅう)信太郎「ものの見方について」は次の有名な書き出しで始まります。

 「イギリス人は歩きながら考える。フランス人は考えた後で走りだす。そしてスペイン人は、走ってしまった後で考える」

 (日本人は考えた後も走らない?)

 「NEET株式会社」は「走ってしまった後で考える」スペイン人みたいですね。

 日本人のメンタリティと正反対の発想から生じるものや、いかに?

 あたたかい気持ちで見守りたいと思います。