ユーモアのアンテナ

 詩人川崎洋さんの本を読んでいたら笑っちゃいました。彼の娘さんたちが小さいときに話したジョークです。娘さんたちはジョークと思ってなかったでしょうけど。
 川崎洋(ひろし)さん(1930-2004)の本を開いてみました。

 『ことばの力』(しゃべる・聞く・伝える)という本です。


川崎洋著『ことばの力』(岩波ジュニア新書)

「ユーモアのアンテナ」より

 わたしには娘が二人いますが、それぞれ、ことばを覚え始めたころから幼稚園に行くようになったころまで、なにかおかしなこと、とんちんかんなやりとりがあると、それをノートに記しておきました。

 次の二つの詩は、そのノートがもとになって生まれたものです。

 意 味

 秋子「オルガンほしいなあ」

 父 「そのうち買ってやるよ」

 秋子「どうして そのうちなの」

 父 「お金ないもん」

 秋子「お父さんのお金とお母さんのお金といっしょにすればいいじゃない」


 父、ふんぜんとして、父の稼ぎで家中が食べていけるということを説明し…

 父 「…だからさ お父さんが原稿書いて それでお金がきて ね? それをお母さんに渡すんだよ」

 秋子「くずしてくださいって?」


 どうしてもわかってくれない


  (詩集『祝婚歌』より)

 批 評

 父がギターを弾いている

 秋子入ってきて ニコニコと
 「音楽みたいだね」


 秋子「昔 人間はしっぽがあったんだよ おばあちゃんがずっと小さいとき」


 葉子 おだてることを覚え 使いはじめる

 「おねえちゃん きれいになったじゃん ずっと前 きたなかったけど」


 ♪娘さんよくきけよ
  山男にゃ惚れるなよ♪
 の唄うたってる葉子

 「おばあちゃん 山男に惚れたら大変だね 子供と孫連れていかなきゃなんない」


  (詩集『祝婚歌』より)

もうひとつ、幼児の詩でわらっちゃいました。

おさいせん にしあきのぶ(六歳)

 おさいせんをいれるのは

 かみさまもおかねがすきなのです。

 (雑誌『Reed』灰谷健次郎さんの選)

 この後、川崎洋さんはこう続けます。

こういう詩を読むと、イギリスの詩人W・H・オーデン(1907-1973)の、次のことばを思い出します。

 「真理というのは笑いを通じて語るものだ」

 な〜るほど。。。