人間がやらかす技術というものは善悪問わずスゴイものです。鉄砲玉で鉄砲玉を撃ち落とすなんてのもそのひとつです。でも本当にできるんでしょうか?
国防に燃え上がる気持ちがまったくわからないわけではありませんが、大きな転回点だからこそ慎重さや冷静さがとても大事と思います。
今『集団的自衛権の深層』という本を読んでいます。
具体的な話が多く、とても読みやすい本です。
さらに現行憲法を活かした、もうひとつの「積極的平和主義」構想も打ち出しています。
左右の立場に関わらず一読の価値ありと思います。
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読みはじめたらさっそく「仰天話」がありました。
松竹伸幸『集団的自衛権の深層』より
第1章 明文改憲ではなく解釈改憲を先行させる理由
ミサイルを撃ち落とせるわけでもないのに
自民党にとって、集団的自衛権の具体的な必要性よりも日米同盟絶対化それ自体が目的になっていると思われる典型が、四類型のふたつめにあたるミサイル迎撃問題である。
米本土に向かうミサイルを自衛隊が迎撃するため、集団的自衛権が必要だというものだ。
一般的に言っても、超高速で飛行するミサイルを迎撃するのが難しいことは、よく知られている。
ピストルを撃たれた際、こちらもピストルを取り出して発射し、自分に向かって飛んでくる弾に当てるのと同じようなものだから、その難しさは並大抵ではないことが分かるだろう。
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それでもアメリカは必死でそのための研究開発をおこない、自衛隊も超多額の費用を支払って、アメリカが開発した装備を導入してきた。
自民党は、せっかくの高価な武器を使い、アメリカの役に立ちたいと考えているのだろう。
しかし、この四類型で問題になっているミサイルの迎撃は、自衛隊の装備では不可能である。
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自衛隊が保有しているのは、ひとつは、北朝鮮のミサイル実験の度に話題になるペトリオット(PAC3)というもので、大気圏での飛行を終え、日本に向かって落ちてくるミサイルを迎撃するためのものだ。
これで迎撃するには、ペトリオットを米本土に配備する必要があるが、まさか自民党もそんなことは考えていまい。
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もうひとつの自衛隊のシステムは、大気圏外を飛行するミサイルを迎撃するものであって、イージス艦に装備されている。
発射されたミサイルの軌道などを綿密に計算しながら、予測される飛行経路に打ちあげて、迎撃するのである。
しかしこれも、向かってくるミサイルに対して打ちあげるものだ。
だから、当たらないまでも、かすめる程度のことは可能である。
ところが、米本土に向かうミサイルは、北朝鮮のものであれ中国のものであれ、日本から離れて北極上空を飛行していく。
日本が迎撃しようとしても、日本からどんどん遠ざかっていくミサイルを、後ろから追いかけていくことになる。
防衛省の元局長をつとめ、内閣官房副長官補を経験した柳津協二氏が強調するように(『改憲と国防』)、そんなスピードと能力をもつ迎撃システムを、日本は保有していない。
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つまり、米本土に向かうミサイルを撃ち落とすというのは、言葉は勇ましいが、不可能なことだということである。
軍事戦略上も無意味だということである。
そういうことのために、憲法解釈を変えるというわけだ。
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なぜそこまでして、憲法解釈を変えるのか。
それはやはり、アメリカに対して、日本はこんなにアメリカのためにがんばっているのだということを示したいだけなのだろう。
こんなに忠実なのだから、何かのときには助けてくれるよねと、すがるような気持ちでいるのだろう。
そこまでして、日米同盟にしがみつくというのが、集団的自衛権推進論者の本音なのだろうか。
ミサイルがたとえ追いつけなくたって、あなたのためにどこまでも、尽くし続ける日本です。(切ない。。。)
もしかしたらこういう本音を言えないから「敵基地先制攻撃論」を説く人も出てきたんでしょうか?
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この本は具体的な事例にもとづく現実的な国防論を書いており、とても参考になります。
後戻りできないこと、子や孫世代の命に関わることですから、慎重に考えなければならないと思います。
反対意見も含め、自分頭で調べること、考えることって大事ですよね〜。