忍者部隊カオ

 パスワードだらけで神経衰弱になりそうです!しょうがないからデスクトップに貼ったり手帳とかに書いたりしています。変な世の中になりました。
 日々ネット社会の進化というか劣化というか、(個人にとっては)どうでもいいことに翻弄される毎日です。

 ニュースで、パソコンに「顔」でログインする「顔認識装置」が発売されることが報じられていました。

 え〜〜、みんな同じ顔じゃない?

 え〜〜、化粧どうすんの?

 今日からはじめる「ノボ村長の妄想物語」、この話題で書いてみました。

 星新一を(長さだけ)超える超ショートサイズストーリです。


(「忍者部隊月光」より)

ノボ村長の妄想物語

忍者部隊カオ

 ハッカーは新世代に替わった。

 もはやラフマニノフ的キーボード奏者は時代遅れとなった。

 きっかけは「顔識別ログイン装置」の普及だった。

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 その頃の世の中は、全人類がネットやらクラウドやらで繋がれっぱなしの社会になっていた。

 そんな社会の中で生存していくには、セキュリティー耐性、つまり刻々と変わるパスワードを膨大に覚える能力が必要となっていた。

 その能力が乏しい者たちは、その能力の高いリーダーの僕となるよりほかなかった。

 自分自身ではログインできない下層階級の社会ができていたのだ。

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 ところがコンピューターやネットの進化と逆比例して、人類の知的能力は極度に劣化していった。

 今や、記憶力という知的能力を用いずともログインできる社会への転換が人類の急務となってしまった。

 そこに現われたのが、超々高性能「顔識別ログイン装置」だったのである。

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 これは、革命的なことだった。

 なぜなら、パスワードログインできない下層階級が、そのハンデがなくなり平等な社会が実現する可能性が生じたからだ。

 あらゆる歴史の例に違わず、階級分断をその利益源とする権力者階層が謀略を図りはじめた。

 彼らは美容整形大国である「カラコク」を金でまるごと買い占めた。

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 そのカラコクで密かに結成されたのが「忍者部隊カオ」である。

 忍法「分身の術」を応用しようとしたのであった。

 ハイテクを駆使して「高性能小型美容整形マシーン」を開発し、ドクターと忍者が二人一体となって活動したのである。

 ある日、忍者部隊カオは権力者集団のひとつ「マイクロ・グルグル」から極秘指令を受けた。

 オコライナのコンピューターに侵入せよと。

 オコライナ高官である美人女性の顔に整形した忍者部隊カオは、闇に紛れて侵入し、任務は成功した。

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 と思ったら!

 もうひとり、同じ顔の高官がいた。

 ふたりは互いににらみ合い、互いに相手を本物だと思った。

 実はもうひとつの権力者集団「アップル・フェイス」も同じことをしていたのだった。

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 と思ったら!

 3人目の同じ顔がやってきた!

 もうだれが本物やらわからなくなってしまった。

 三すくみとなった巨大サーバーの部屋。

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 するとコンピュータが過熱しはじめた。

 サイレンとともに合成音声が流れた。

 「ホンモノハ ダレデスカ? オナジカオジャ ダレガ ダレヤラ ワカリマセーン!」

 巨大コンピュータから煙が出て、やがてダウンした。

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 それから一ヶ月後、世界中の都市部の光景は異常だった。

 同じ顔の人間があっちにもこっちにもいて。。。

 もちろんあらゆるシステムはダウンしてパニック状態となっていた

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 その後の世界はどうなったかって?

 セキュリティーは昔のラフマニノフ型エントリーに戻って少し落ち着きを取り戻した。

 カラコクは経済的に特に潤っていた。

 どうしてかというと、世界中から美容整形患者が殺到したからだった。

 今度は顔をユニークにするので大繁盛だったのだ。

 つまり、何から何まで元に戻ったってわけ。

 →独創村の詩