もう春!発想も思いきって衣替え

 以前自分が書いた記事に教えられるということがあります。仕事仲間が5年前の私の文章を、逆に私に教えてくれました。
 私の高校同級生であり、独創村仲間でもあり、仕事のデザイン・パートナーでもあるゴリランジェロ氏から突然電話が来ました。

 「カワシマ、いまさ〜、ブランディングのことであれこれ考えていたら、ユウキ君(同僚)がさ〜、カワシマが5年前に社員向けに書いてうちにも送ってくれたメール見つけたんだよ。えらくいいこと書いてあると思って、二人で読み直して参考にしてるんだ。そっちにも送ったから!」

 ありがたいな〜と思いつつ、「何だっけ?」と思いました。

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 さて、帰ってからメールを読み直してみたら、「そうだよな〜〜」なんてわが事ながらうなずいてしまいました。

 実はこの文章を書く一年前、リーマンショック後の津波がわが社にも押し寄せ、初めての赤字(それも大赤字)を出しました。

 そのつらいときに大いに悩み、仕事の本質みたいなことを考えるきっかけになりました。

 苦しい日々でしたが、かわりに会社の未来につながる貴重なコンセプトを得ることともなりました。

 ふっきれた私が社員の皆に送ったメールでした。

 恥ずかしいですが、何かのお役に立ててください。

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社長通信2010/4/8号
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もう春!発想も思いきって衣替え
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(「個業化の時代」という本)

 レッツのカタログやLets shopでお世話になっているノックスの中嶋社長から「個業化の時代」という本を教えられ読んでみました。

 著者は日本型CIのパイオニアと呼ばれている中西元男という方で、この本は1987年出版ですから今から33年前の本です。

 内容が良質だと古いも新しいもなく、今でもとても参考になることばかりが記載されています。

 今日は、この本から私たちが応用できそうなことをピックアップして紹介したいと思います。

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(まずCIとは)

 本書の表紙にある紹介文から引用します。

 CI(コーポレート・アイデンティティー)とは、企業を一つの人格とみなし、その企業固有の文化風土を創りつつ、美的経営を目指す情報化時代の経営戦略である。

 また、変貌著しい転換期に、企業がこれからも精神的、物質的に存続していくための新しい価値観を創造していくものである。

 著者はこんなふうに書いています。

 「自分の会社とはいったい何なのか」と自己確認し、「うちはこういう会社です」と世間に宣言し、認めてもらえる存在になることである。

 この方がわかりやすいですね。

 さらにこんなことを書いています。

 我々がそこで何をしてきたかといえば、依頼を受けた企業を徹底的に洗い直し、その企業の長所と短所を見つけだし、長所には栄養を与え、短所をいかに補っていくかをアドバイスしてきたのである。

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(ロゴマークを思い浮かべてみよう)

 レッツにもロゴマークがありますね。

 ロゴマークは会社のイメージ、理念、方向性を表すもので、会社のシンボルとしてとても大事なものです。

 実は「ロゴマーク」とは中西氏の造語だそうです。

 この方がCIに関わった企業をそのロゴマークと共に思い浮かべてみましょう。

 マツダ、セキスイハイム、NTT、コクヨ、キリン、リコー、INAX、東レ、東京海上、松屋、ケンウッド、バンダイ、小岩井農場・・

 これらの企業のうち、かなりの数が落ち目傾向にあったのですが、CIで飛躍的に業績を伸ばせた企業が数多いのです。

 真のデザインというものには、企業を甦らせるパワーがあるということをこの本で実感しました。

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(努力の方向が問題なのだ)

 本の中から珠玉の言葉を次々と紹介していきます。

 「努力が足りなかったという問題ではないのだ。

 不況業種の人達も努力は十分にしているだろう。

 だが、その努力の方向が問題なのだ。・・

 今はまさにディレクション(方向づけ)の時代である。

 ・・・ではどこで差がつくか。

 それは、いわばその企業の、時代に対する読みであり、演出力である。

 今や、自らをどう魅力的に見せるかが経営上の重要なテーマになってきているのだ。

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(CI戦略はIBMから始まった)

 後年、ワトソン・Jrは「グッドデザイン・イズ・グッドビジネス」と明言した。

 彼はある講演の中で、アメリカの企業を20年単位で振り返ってみると、上位20社の中に、同じ仕事に携わりながら残っている企業は3社しかない。

 そうした激しい競争の中で企業が生き残っていくためには、次の三つの条件を満たす必要があると言っている。

 第一は、誰がみても立派といえるような信条を持つこと。

 第二は、その信条を守り抜くこと。

 第三は、その信条以外はいつでも変えてしまう勇気を持つこと。

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(構想不況企業になるな)

 「業種」にこだわるのではなく、「個業化」、つまり従来の産業分類を超えたところに自分独自の個性的なビジネス分野をつくり、ポジションを得た会社が勝ち残っていくだろう。・・・

 結論づければ、これからの企業発展は既存の業種の枠組みを乗り越えて、個性的な経営内容と固有の経営環境をつくり上げることにこそあるといえるだろう。

 「構造不況業種になるといえども、構想不況企業になるな」ということである。

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(「創察力」「独造力」「魅業力」)

 創察力:時代を洞察する情報収集力と時代をつくる情報の良質転換力

 独造力:独創的な商品づくりと事業開発による市場創造力

 魅業力:個性的で注目期待の企業体づくり
 
 「生産機関+経済機関+文化機関の鼎立という意味での個業化」こそ、今日のCIが目指すところである。

 言いかえれば、個性的経営と企業美学のある会社づくりである。

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(私たちにもあてはまる)

 以上、私がピカッと目にとまった文章を引用しましたが、かみくだいて考えてみるとレッツにも十分あてはまることです。

 この方なら、レッツの方向性をどう言うだろうかと勝手に想像してみました。

 「もはやレッツはパッケージソフトメーカのレッツではない、建設業向けソフトの開発会社でも販売会社でもない。

 「レッツはソフトウェアをツールにしてお客様の発展をお手伝いし、仕事の喜び、楽しさを共に創造していくパートナーだ
 
 「そのために、私たちはよりお客様と共感し、お手伝いできる範囲とその能力を広げていこう

 「私たちの仕事の定義をもう一度原点から考え直し、何ができるか考えてみよう、どう変容できるか考えてみよう

 今日は概念的な話でしたが、私の考える「NEXTレッツ」はこのような考えが基本にあることを理解してください。

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 このメールで自分自身が驚くことは、こんな「理想論」が「一番困難な時期」に、いやその時期だからこそ生まれたということです。

 その後の5年間、私は遠回りのようですが、アートやデザインの力、「自然」「人間」という階層の共感を仕事になんとか盛り込んでいきたいな〜と思い、仲間の力、社員の力を借りてあれこれ試行錯誤してきました。

 「レッツくん」の創出はじめ、各種サイトやメルマガ、ユーザー企画などのあれこれです。

 「みんなの独創村」、「あったかギャラリー」、「レッツくんランド」、「レッツ通信」、「共創仲間通信」、「しごともっと楽しく通信」・・・

 これらは自分にとって「あ〜〜、こんな会社を創ってきたよかった!」と思えるためのあれこれです。

 私にはそれが「おらほのブランディング」というものだと思えるのです。

 (おらほ=宮城の方言で「私たち」の意味)