空海はこの世の次元を超越しました。真理探究に悩み、エリートコースをドロップアウトし、ひとり荒れた山野をへめぐり『虚空蔵求聞持法』を修した若き空海。彼はついに宇宙生命と合体しました。その書は宇宙と交信する「宇宙記号」なのです。
生命を与えられた文字たち
これはSFではありません。「真言宗」の檀徒の方なら疑問を感じる人はいないはずです。密教の根本である「曼荼羅」とは「宇宙の構造図」であり、「真言(マントラ)」とは「宇宙言語」であるからです。
私は「曹洞宗」なんで専門外ではありますが、司馬遼太郎さんの『空海の風景』を四回読んで、空海と密教に大変興味と魅力を感じました。最初に読んだのはたしか二十数年前ぐらいでした。
さらに最近「空海 至宝と人生」という特集で映された彼の書『益田池碑銘』に書かれた文字を見て大変びっくりしました。
字が躍っているのです!生命を与えられたかのように。
私が親しくさせていただいているfacebook仲間にはユニークな書家の方が数名いらっしゃいます。その方々の刺激もあってか、近頃「書」というものの奥深き謎と魅力にとらわれはじめてきました。
録画という苦行
そんなおとといの晩、録画していた「空海 至宝と人生」の映像をネットで見られるようにとカメラで撮りました。数十分正座してi-phoneをジーと持ったまま微動だにせず。(終わった後しばらくセメントで固まったようになってしまいました・・・)
苦行ともいえる画面とカメラへの集中・・・。おかげで、集中の極みで書を成すお大師様の片鱗に、百万分の一くらい触れられたような自己満足がありました。
芸術というものは、それを為す「肉体」を感じることによって、より深い感動を得られるのではないでしょうか?
さてつたなき録画をご紹介します。暗い場面では、地蔵様のようにi-phoneを持って録画している私が画面に映り込んでいます。少しお笑いですが、どうぞ!
(しっかりした映像を見たい方はNHKアーカイブスかNHKオンデマンドをご利用ください)
究極のアイコンとは、まさにこのような「書」をいうのではないでしょうか?
世界史上最大の天才
空海を「世界史上最大の天才」と評した高名な方がいらっしゃいました。
え〜!それはほめすぎじゃないの?と、かつて私は思っていたのですが、年々歳々「いや確かに『世界史上最大の天才』といえるにちがいない」と思えてきたのです。
西洋にはアレクサンダーやらレオナルド・ダ・ビンチやらシェークスピアやらニュートンやらナポレオンやらアインシュタインやら・・・いっぱい天才がいるんじゃないですか、という人は多いでしょう。
しかし、これらの天才たちと空海は「天才の次元」が違うといえます。
空海は「宗教」「科学」「芸術」「技術」すべての面で天才でした。でも彼の場合は他の天才たちと全く異なる要素がありました。
それは彼自身が「宇宙」と合体した「宇宙生命そのもの=密教仏」であったということです。
しかも生まれながらにではなく、人間としての修行を通して人間の限界を超えた稀有の人物であるのです。
空海は、宇宙と合体した存在となりながらも、人間世界の心や情をもっとも大切にし、心温まる存在であり続けました。最澄さんとの関係や時の天皇との間では人間くさい一面も大いに見せてくれました。
即身成仏した後も「お大師さん」と親しまれ、お遍路さんには「同行二人」と、分け隔てなく常にやさしく寄り添ってくれ続けています。
「空海」という名前
空海の天才が世界史上最大である理由は「比較を超えた存在」であるという点にあります。
その天才たる所以を考えてみると、それは「自分だけが輝く天才」ではなく「衆生をも輝かせる天才」ということにあります。
「衆生」とは人間だけでなく「この世に生を受けたもの全て」のことです。さらに空海は人間をはじめとする生き物だけでなく、「衆生をはぐくむ自然そのもの」をも輝かせます。
それが彼の名「空海」の所以であると私は思っています。
空海の天才を私が評すとするならこんなふうに表現したいと思います。
「宇宙存在(神仏の世界)」と「地球存在(私たちの世界)」をつなぐ「新次元に到達した存在」
興味のある方はぜひ司馬遼太郎さんの『空海の風景』をお読みください。きっと納得されることでしょう。