ノボノボ童話集「妖怪ワケモン」

 昨年かな?孫娘にあれこれ蘊蓄たれていたら「じいちゃんの頭にウンチがいる」と言われました。何のことかと聞いたら「妖怪ウォッチ」に「ウンチクマ」というくどい話を語る妖怪がいて、ウンチが頭に付いた熊の姿なのだそうです。ヤレヤレ。。。そこで私も妖怪童話を一つ書いてみようかと思いました。

ノボノボ童話集

妖怪ワケモン

 ほんとうの妖怪は人間の姿をしている。

 そして誰も知らない、というか知り得ないことなのだが、

 彼らは大昔から死なずにいる。

 それら妖怪の中でも大王は「妖怪ワケモン」である。

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 妖怪大王の地位を守りたいがために、

 ワケモンは得意の「ワケワケの術」を駆使してきた。

 何千年か何万年かしらないが、とんでもなくはるか昔のこと、

 はじめて「ワケワケの術」を使った。

 最初のそれは「男」と「女」を分けたこと。

 男のアバラ骨を使って女をつくり、

 男が優れていると差別して、妖怪どもの大喝采を浴びた。

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 ところが年々、女が強くなってきて神通力?が弱ってきた。

 そこで今度は「貴族」と「平民」を分けてみた。

 これもやりすぎて革命やらに引火した。

 え〜〜い、次なる「ワケワケ」はと、あの手この手を繰り出していった。

 「白人」対「黒人」だ!

 「南」対「北」だ!「東」対「西」だ!

 これらもやっぱり長続きしない。

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 そこで妖怪ワケモンは、大政治家みたいなものに変身し、

 「アーリア人」対「その他大勢」だ!

 「大和民族」対「その他大勢」だ!

 と、民族ワケワケの術を繰り出した。

 この差別は効果が大きく、大量虐殺やら戦争やらが大発生。

 妖怪どもは大喜びとなった。

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 ところが、あんまりやらかしすぎて、

 民主主義やら何やらで、またもワケワケ術が弱まった。

 え〜〜い、今度は大企業家・大投資家の姿に変身し、

 「富裕層」対「貧困層」というワケワケ術を放った。

 これはけっこう効果が長く続いたが、

 昔から終わらぬ術はないことを、自身よ〜く理解している。

 「妖怪ワケモン」は次の一手を考え中だ。

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 ところが、妖怪大王とてたかが妖怪の子?

 次の差別のネタが難しい。。。

 小妖怪どもは、どうもいぶかしげのようだ。

 妖怪ワケモンはそれで睡眠不足である。

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 ところが、最近よいことを思いついた。

 歴史を思い切りさかのぼり、過去に使った「ワケワケ術」を、

 また順番に使えばいいんじゃないか?

 どうせ人間は、その「悲惨さ」などとっくに忘れているさ。

 しょせん人間も、「差別」がなくっちゃ、己の実感がないはずさ。

 まずは、世界各国の政治や社会で小さく実験してみよう。

 火口がついたら、一気に燃やそうぜ!と。

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 少年、少女のみなさん、

 ニュースの裏には「妖怪ワケモン」あり。

 覚えておこうね。

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 →「無敵の鎧」