ノボノボ童話集「美しき誤解」

 国営なら何をしても許されるのがこの世の掟。人殺しは防衛、詐欺は政策、博打はカジノと名を変えて。なんでもOKにできるんです。一度やったらやめられない止まらない国会議員。ま〜こっちのほうが薬物中毒みたいなもんですね。

ノボノボ童話集

美しき誤解

 まもなくクリスマスがやってくる。

 新年になれば初詣。

 イスラム教だと、毎年断食ラマダン。

 あらゆる宗教に、年に一回以上の儀式というか掟がある。

 毎日という宗教もある。

 もう誰も知る人はいないのだが、

 実は、これって神様、仏様の人間界「監査」なのだ。

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 ずっと昔、神様は人間界の止まらぬ劣化、野蛮化に悩んだ末、

 万国の神仏が協同で対策を行うことに決めたのだ。

 それが天国にある「万国神仏連合会本部」だ。

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 人間界の止まらぬ非行の原因は、そもそも彼ら神仏にある。

 各国の神話を読めばだれでもわかる。

 人間そっくりどころか、

 ここまでやるかい?というくらいのエログロ世界だ。

 なじみ深いところでは、ギリシャ神話、旧約聖書、古事記を

 読んでみるだけでなるほどと思うが、

 もっとイッテル神話もたくさんある。

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 悪辣な手段を用いて政界、経済界、裏社会のドンとなった親父が、

 甘ったれバカ息子の非行に悩むのと同じ。

 ゆえに宗教行事とは、

 いわばコーザノストラの秘密儀式や掟のように、

 「タガをしめるため」と考える学者も、実はいる。

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 さて、時は2020年。

 ところは、おなじみのジャパン。

 神仏連合会本部より合同監査団が天からやってきた。

 常に自転車操業の経済社会、

 連続バブル生成が経済政策と同義語になって久しい。

 さすが老練老獪の人間界のタヌキやキツネたち。

 オリンピックの次のバブルがスタンバイしていた。

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 トーキョー、オオサカに超巨大ダブルカジノを建設し、

 遅まきながら、世界のアブク銭を吸い込もうとしていた。

 バブルにアブク、なるほどではある。

 世界のセレブやら、ヤクザやら、動物農場のごとき

 モンスター社交界だが、本当は一般人こそカモなのである。

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 ところが、監査団はもうモウロクジジイ。

 物忘れと思い込みが激しくて、さらに涙もろい

 ジャパン国営カジノの盛況を見て、

 多くの神仏が感動の涙を流すのだった。

 そして、ジャパンの監査は好点数であった。

 いったいなぜ?

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 天に戻って監査内容を報告していた監査団。

 天の親分がたずねる。

 「なにゆえ、ジャパンの点数がこんなに高いんだ?」

 監査団の団長がヨボヨボ声で答える。

 「わしらは人間の心の美しさに感動したんでがす。

 あの巨大なカジノに通う庶民の気高い心でがす」

 「ほ〜?」

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 団長は意気揚々と親分に説明する。

 「親分様、ぜひ聴いてくだしゃんせ。

 自分の財産があっという間に巻き上げられることを、

 きっと知っているにも関わらず、

 そして、自分の精神や仕事や家族が破滅しようとも、

 国家というものに自分をささげようとしている人々の多いこと!

 これを美しき自己犠牲と言わずになんとよべますかいな?」

 天界ではスタンディングオベーションの嵐となった。

 「気高きわが子、人間よ、親としておまえたちを誇りたい」と。

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