気仙沼のトレーラーハウス

 「みんなの独創村」の模索は続きます。昨日は気仙沼へ行ってきました。清水国明さんが運んできたトレーラーハウスと、そこで行われている活動を見たいと思ったからです。
 十日前にも行ったんですが、その時は見つけあぐねてしまいました。
 (その時の様子はこちら→赤ちゃんの泣き声と「ガイガー計」

 昨日は早くに出発したので1時半頃到着し、気仙沼の五右衛門ヶ原仮設住宅地で目的のトレーラハウスと出会うことができました。

 ちょうどその時間より、そのトレーラーハウスでロボット展示会が開かれました。

 これは先週末よりはじまった企画のようで、ニュースにも出ていました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120128/t10015609201000.html

NHKニュースサイトより抜粋

 宮城県気仙沼市の仮設住宅の一角に独立行政法人「産業技術総合研究所」のロボット研究施設が完成し、ロボットなどを活用した被災者支援の研究が始まりました。

 研究員は「どのような支援ができるのか、現場を見なければ分からないことがたくさんあると思います。被災者の要望を生かしたい」と話しています。

 研究施設が設けられたのは、およそ300世帯が暮らし、気仙沼市で最も規模が大きい五右衛門ヶ原仮設住宅です。

 施設では、産業技術総合研究所の研究員が仮設住宅の住民と共に生活をしながら、ロボットなどを活用した支援の方法を研究します。

 28日は、気仙沼市の菅原茂市長も施設を訪れ、お年寄りの歩行を助けるロボットを体験していました。

 また施設には、孤独感を解消するために開発が進められているアザラシの赤ちゃんの形をした「癒やしロボット」や、表情をリアルに表現できる人間そっくりのロボットなども展示されています。

 仮設住宅に住む小学4年の女の子は「アザラシのロボットは毛がふわふわしていて気持ちよかった」と話していました。

 ロボットなどの人工知能が専門で、この施設に常駐する小島一浩主任研究員は「ロボットを使ってどのような支援ができるのか、現場を見なければ分からないことがたくさんあると思います。被災者の要望を把握して研究に生かしていきたい」と話しています。

 清水国明さんはおりませんでしたが、上の企画を担当されている「産業技術総合研究所」の方からいろんなお話を聞くことができました。

 それによると、このトレーラーハウスは一般的な作業ボランティア支援に使うのではなく、今後の災害支援活動をレベルアップするために、居住、エネルギー、循環、支援サービスなどについて新しい方法を模索する実験場として設置されたようです。(そのように私は理解したということですが)

 そのため、清水国明さんが主宰する「NPO法人河口湖自然楽校」や「産能研」、各メーカー等が共同でプロジェクトに参加しているようです。

 実は、前日の「非電化工房」と通じるコンセプトがあり、大変参考になったことがいくつかあります。

創るために模索する

 「創造」するために、まず「模索の場」を準備するという発想です。

 今の社会では、ほとんどの仕事が「すでにできあがったものやこと」を素早く処理する性能や、ライバルよりちょっとだけ抜きんでる競争性能、それと模倣性能だけが偏重されています。

 これは人間型ロボットの仕事といっても過言ではありません。そのため、本来「仕事」に不可欠であるべき「人間にとっての価値」がいつのまにか希薄になり、知らず知らずのうちにトンデモないものができてしまいます。

 原発や、リーマンショックを引き起こすような行き過ぎたグローバル経済などがいい例でしょう。

 それじゃ人間が行うべき仕事は何でしょう?

 それは「独創」、つまり人間にとってより良き価値の創造です。

 それはとても困難なことですが、その過程はとても愉しいことであるはずです。

 その過程を「試行錯誤」といいますが、現代においては「失敗」という言葉しかないようです。

 創造しようにも「試行錯誤」ができない社会や仕事。

 「非電化工房」もこの「トレーラーハウス」も、その大事な「試行錯誤」の場所を、もっとも必要としている(生活の)場所にまず設置し、創造のための模索活動を始めました。堂々と「実験場」として。

ハイブリッドシステム

 このトレーラーハウスへの電気供給システムは3系統ありました。


 
 ひとつは、電力会社からの「電線」による供給

 ふたつめは、屋根に設置された「太陽電池パネル」からの供給

 みっつめは、プロパンガスによる「コージェネレーション」からの供給

 太陽電池とコージェネだけで間に合いそうだと担当の方は話していました。

 特に注目はプロパンガスによる「コージェネレーション」です。

 コージェネレーションとは、熱電併給(ねつでんへいきゅう)といって、暖房や給湯と一緒に発電して電気も供給するというシステムです。

 身近にも利用されていて、自動車のエンジンが暖房も直流電気も並行して発生させているのと同じ考えです。

 私も3.11の震災で痛切にプロパンガスのありがたさを感じました。あのとき都市ガスはみな使えず、多くの住民が一か月も使えない状態になりました。

 まるでチューブにつながれた家畜のようなもの、と感じたものです。

 その点、プロパンガスは地元のガス会社がしっかりとメンテナンスしてくれて大いに助かりました。

 何よりも、独立した供給システムであることが、今後の独立した個人としてのライフスタイルを強化していく上で、とても魅力的です。

 「非電化工房」も「否電化」ではなく「ホドホド快適」をめざしています。その発想の基本にあるのは「多様性」つまり「ハイブリッド」です。

 非電化工房の主宰者である藤村氏が、過去、日本における「コージェネレーション」「ヒートポンプ」のパイオニアとして実用化の大きな力となったということもぜひ紹介しておきたいことであります。

自然共生循環システム

 もうひとつおもしろい付属設備が付いていました。

 それは、「帝人」が実験提供している屎尿・生ゴミ処理システムです。

 これはポンプに電気を使いますが、トレーラーハウスから出た屎尿や残飯がこのタンクに集まり、ここで濾過殺菌され、そのまま外部(川や側溝)に排水できる設備らしいです。

 これがあれば、災害時のみならず、自然の中で自然を汚さずに、さらに快適に生活可能です。

 ということは、多くの人が都市部でなくても普通に暮らせるようになる、イコール地方(田舎)暮らしを促進できることにつながります。

 本来、自然の中で生活ができればそれが人にとって一番望ましいことだと思うんです。

 非電化工房でもバイオトイレをつくっています。見かけは原始的でも、こちらのほうが循環システムとして最先端であることは間違いないでしょう。

 しかし、同じコンセプトに多様性があれば多くの人が無理なくシフトしていけるでしょう。

コンパクトで移動可能

 トレーラーハウスは車両です。なのでどこにでも移動可能です。

 ということは、この車両を必要としている場所へ即持って行けるのです。

 清水さんも、欧米のようにこのトレーラーハウスを災害時のレスキュー住宅として、国や民間が常時備蓄しておくシステムを模索中のようです。

 災害時以外は、自然景勝地において共同オーナー式別荘や野外活動施設として有効利用しようという構想のようです。トレーラーハウス.pdf 直

 さらに、昨日聞いた話ではこのトレーラーハウスのレンタルについても検討しているということでした。

 それは、今新車を買うときにあらかじめ残価を設定して毎月の支払額を安くする方式が流行っていますが、そのしくみと似たものを考えているようです。

 トレーラーハウスはここで紹介したべーシックタイプのワンユニットが4−500万くらいするらしいんですが、さらにいろんな設備を加えれば最低7-800万から1000万くらいはいくでしょう。

 しかし、それを残価方式のレンタルにすれば、ざっと皮算用ですが、月4-5万くらいではないかと。

 そうすると、これを店とかに使うとすればかなり安上がりかもしれない。

 またアパートに住むより、こちらのほうがいいという人もきっといて、トレーラーハウスオーナーがアパート経営のバリエーションになり得るかも知れかもしれない。。。

 何よりも私が期待するのは「移動」という考えを生活の重要な要素として組み込む生活スタイルの人々が増えるのではないかと思うのです。

 そこから自然発生してくる新たな文化やニュービジネスこそ、きっと低成長時代でも幸せ度はかえって豊富であるという社会つくりにつながっていくことだと思っています。

参考
 「非電化工房」見学会