お金の「使い方」は知らない

 私たちは「お金を得る方法」だけを学んできました。「お金の使い方」を学んだ人はほとんどいません。現代の大きな問題点ではないでしょうか?

 「金持ち」だけが「お金の使い方」を考えればいいんじゃない?

 そうじゃないんです。

 「金持ち」というのは、お金を増やすことにしか興味がないから、上手に使う能力はとても乏しいんです。

 それに、金儲けにはきりがないので、だれも自分を「金持ち」とは思っていないんです。

 一人ひとりが「お金の使い方」、いや「お金の善き使い方」を考えないといけない、そんな時代になったと思います。

 小遣い程度のお金だって、その使い方で「生きた金」になります。

 これからは、そんな人を「本当のお金持ち」と言いましょうよ。

 高校生や中学生、小学生が教えてくれました。

朝日新聞 2012.3.22
お金、いま学ぶ:5

 東京都昭島市にある私立啓明学園高校のコンピューター室。生徒たちがネットのページを開いた。

 南米エクアドルで服を売り、9歳の娘を育てる33歳の女性、アフリカのウガンダで食品を売っている5人の子持ちの49歳の男性……。途上国の人々の写真が次々現れた。

 生徒が1口25ドルで1口ずつ無利子融資した人だ。子どもの多い人、貧しい国の人、子どもの未来のためにお金を使いたい人――。そんな基準で選んだ。

 米国に拠点を置くNPO「KIVA」(スワヒリ語で絆の意味)が仲立ちしている。このNPOは2005年から、事業資金を銀行から借りられない途上国の人と、融資で応援したい人をネットで結び付け、自立を手助けしてきた。各国の信頼できる融資団体と連携しているため、全体の返済率は100%近い。

 啓明学園は国際教育に力を入れてきた。この活動には一昨年から授業で取り組み、生徒や卒業生が計2万円近くを融資したり、返済され戻ってきたお金を再び投入したりしている。いままでに19人に融資した。

 貸した一人ひとりの返済率の数字は、ネット上でどんどん更新される。生徒は言い合った。「彼女は33%まで返せた」「よかった。彼は返済し終わってる」

 「途上国の人は、ビジネスの対等なパートナー。お金を通じて世界の見知らぬ人と、顔の見える関係が生まれる」と授業を担当する関根真理さんは話す。

 「お金が希望のために使われている」「未来や人とつながる大きな25ドル」。生徒たちの感想だ。
 「KIVA」の日本語サイトを開いている団体「KIVA JAPAN」(東京・山下豊一郎代表)によると、米国では多くの学校が参加している。

 しかし、山下さんが日本で活動中の学校としてつかんでいるのは啓明学園だけだ。神奈川の県立高も試みていたが、昨年は取り組んでいない。「もっと多くの人に知ってほしい」と山下さんは言う。

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 寄付行為を根付かせようとするNPO「日本ファンドレイジング協会」(東京)は10年から学校などで「寄付の教室」を開催。11年度は33カ所で開いた。

 今月3日、高知市の「教室」には小学4年から中学2年の計24人が集まった。

 市場に出回らなかった食物を生活に困った人に分配する団体、東南アジアの子どもに奨学金を送る団体、そして自然保護団体の3団体を、先生役の人がプリントや映像で紹介した。

 もし千円を託すとしたら、どの団体をいちばん応援したいか、子どもたちで考える。高知県南国市から参加した山本航太郎君(12)はつぶやいた。

 「自分らのためじゃなくて、他人のために使わんといけんお金もあるなあ」

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 三重県伊勢市立小俣(おばた)中学校。2月、1年の家庭科授業の一環で、フェアトレードで買った南米コロンビア産のバナナを地元スーパーの店頭で販売した。

 「無農薬のフェアトレードバナナです」「世界の子どもたちに優しいバナナです」。子どもたちが声を上げる。1房300円。用意した64房は、2時間余りで売り切れた。

 フェアトレードは、途上国の製品、産物をその労働に見合った価格で取引し、結果的に途上国の人々の生活支援にもつなげる取り組みのことだ。西村朱美先生(48)が「持続可能な社会を考える消費者になってほしい」と授業を考えた。

 バナナは趣旨に賛同した、県内の企業が提供し、学校側が買い取った。売り上げ1万9200円は、先生を通じて、すべてNGOなどに寄付した。

 小俣中は、バナナやチョコレートを題材に、安さの裏にある児童労働の実態や、自分たちがフェアトレードの品を買うことの意味を考えてきた。

 山本彩巴(いろは)さん(13)は言う。「お金って、自分の生活に必要だけど、それだけじゃない。見えない誰かを助けるためにもあるんだ」

 お金がどう生きるかを知る。どう生かすかを考える。その学びが、子どもたちを多くの人々と結びつけ、世界へ、未来へとつなげていく。

 私たちも、お金を目的ではなく道具として考えれば、あれこれ身近でおもしろいしくみを工夫できるのではないでしょうか?

 そもそも何もしないで金を増やそうというのがおかしい話で、こんな話もあります。
 「エンデの遺言」より

マルグリット・ケネディー
1枚の金貨の2000年後の利子

 利子が利子を生むという複利というのはまさにこの指数的な成長を示すものです。それがいかに非現実的なものであるかは、次の例でおわかりいただけると思います。

 ヨゼフが息子キリストの誕生の時に、5%の利子で1プフェニヒ(1マルクの100分の1)投資したとします。そしてヨゼフが1990年に現れたとすると、地球と同じ重さの黄金の玉を、銀行から13億4千万個、引き出すことができるのです。永久に指数的な成長を続けることが不可能なのは火を見るより明らかでしょう


 人は永遠に、他人任せの利息や配当という不労所得を追い求め、リーマンやらAIJやらが津波のようにそれらの金を無に帰するというサイクルを繰り返すのでしょうか?

 経済学や経営学というものは「金の善き使い方」を教える学問に変わったほうがよいのではないでしょうか?

 金儲けをスポーツのように考えているバイタリティーあふれる文明野蛮人も、これからは「金の善き使い方」にこそスポーツマンシップを発揮すべきではないでしょうか?

 無益で幼稚なマネーゲームは人間性を壊していきます。

参考
 モモが出番を待っている
 あったかい被災地応援ファンド