新入社員に「便学のすすめ」

 今日4月1日は入社式です。二名の新入社員が入ります。近いうちに私が彼らに話そうと思っているのは、なんと!「便学のすゝめ」です。
 どこの経営者も同じでしょうが、「新入社員へ何を話して聞かせようか」ということで大いに悩むものです。

 たいがい「挑戦せよ!」の話やら、もろもろの「立派な話」になってしまいがちで、自己満足に終わってしまうことも多いのではないでしょうか。

 そこで私は考えました。

 「彼らが一生役に立つこと」を教えてあげようと。

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 それが「便学のすゝめ」です。

 「学問のすゝめ」の実践版といえるかもしれません。

 私の貴重な経験から生まれた言葉であり勉強方法です。

  →便学の歴史

 教材となる本も準備万端整え出番を待っています。


新入社員の皆さんへ

 便学のすゝめ

 「人間として一番大事なことは教養を身につけることです。

 なぜなら教養を身につけるということは「人を知ること」だからです。

 それは自分を、他人を、人がつくる社会を知ることです。

 教養は良い本をたくさん読むことで身につきます。

 良い本を無理なく読める習慣を身につけると一生の財産になります。

 私が勧める無理のない習慣とは『便学』です」

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 「『便学』とは、毎朝トイレで10分間、大人として読むべき「良き本」を毎日読み続けることです。

 たった10分間だけですし、朝は頭もスッキリしていますからとても集中できます。

 ですから難しい本でも何とか読み続けることができるんです。

 貴重なトイレタイムに、新聞やスマホやノウハウ本などを持って行ってはいけません

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 「トイレに持って行く本はきちんと選定しなければいけません。

 自分が「読みたい本」という尺度ではいけません。

 自分が「読むべき本」という尺度で、幅広い分野から主に古典や専門書をリストアップします。

 具体的には文学、思想、歴史、自然科学の分野から選ぶのが良いでしょう。

 リストアップが難しい場合は、まず一冊の「良き本」を読んでから、その関連の本を順次読んでいくのでもよいでしょう。

 そして読み始めたら、どんなことがあっても読み切るという決意をもつのです。

 一日10分間ですから無理なく必ず読み終えることができるはずです」

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 「一冊の本を300ページとしましょう。

 標準で1ページ1分くらいかかります。

 ですから読み終えるのには300分=5時間かかります。

 一日10分間だと30日で読み終えることができます。

 一ヶ月に一冊、年間にすると10〜12冊も良書を読み終えることができるのです。

 難しい本だと1ページ3〜5分くらいかかるのもあります。

 決して速く読み飛ばそうとしてはいけません。熟読が大切です。

 良書なら少ない冊数でも大変な知的財産になるのです」

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 「君たちにはこのことを体で理解してもらおうと思っています。

 私がいちいちトイレにつきあうのではありませんよ。

 私と一緒に毎朝会社で便学シミュレーションを行うのです。

 朝一で、私と一緒に10分間読書(輪読)を行います。

 その本は『137億年の物語』にします。

 この本は約500ページありますから、読み終えるのに50日〜60日かかるでしょう。

 たった10分間二ヶ月続けるだけで、こんな厚くて中身の濃い本を読むことができることを実感してください」

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 「最後にもうひとつ。

 朝の10分間以外は好きな本や雑誌を読んでかまいません。

 でも良書を読むと、どうでもいい本は読みたくなくなるのです。

 実はそれも「教養」というものです。

 それは「良いもの」と「陳腐なもの」を区別できる感性が磨かれるということです。

 良い仕事をするため、良い社会をつくるためにとても必要な能力なのです」