里山の放射能汚染

 岩手県奥州市江刺といえば福島原発から直線距離で200キロ以上も離れた場所にあります。みんなの独創村「村の仲間たち」にはそこで「うたがき優命園」という里山生活学校を営む方がいます。

 今日の朝久しぶりにブログを読んでびっくりしました。なんと岩手県内の牧草から基準値を超えるセシウムが検出されるという衝撃、さらに独自に計ったところ、屋根からの雨だれの下は放射線管理区域の数値を超えている・・・

 私の住んでいる宮城県は福島により近いので、もっと多くの放射能が来ているに違いないと思い、一瞬孫の顔が頭をよぎるとともに背筋が冷や〜としました。

 放射能は肉体を損ないますが精神も損ないます。長年自然農法で土地を耕してきた方が、その土地を放射能に汚染されたとするなら絶望以外の何ものも感じられないでしょう。子供が放射能を浴びてしまった親も同様です。

 私たちは今、放射能という対処不可能なものの恐ろしさを体験しています。しかしまだそれを制御できる、制御しようという気持ちも半分持っています。世に影響力の大きい経済人や経済評論家、政治家は経済効率の面から原発の維持促進を考えています。

 いったい私たちはこの判断の基準をどこにおくべきでしょう?
私は問題を四つの層で考えることにしています。
それは「会社人」<「社会人」<「人間」<「生物」という階層です。

 あらゆる問題はすべての層に関わっているでしょう。もし上位層に致命的な影響がないのならどの層で考えるのも自由だと思います。

 しかし、放射能という問題は間違いなく最上位の「生物」という層に致命的な影響を及ぼす問題です。これは経済や政治つまり「会社人」や「社会人」という層で考えてはいけない問題だと思うのです。それでも多くの人は理路整然とした経済価値説にうっとりし、このような被害があっても現状維持を続けてしまいがちです。

 野生生物は難しいことは知らなくても危険は本能で察知します。私たちも、もともとは野生生物です。放射能という目にも見えず臭いもしない不気味なものに対処するには、私たちの本能的な感覚がもとになければいけないと思うのです。 その感覚がないまま構築される論理はいくら理路整然としていても砂上の楼閣にすぎないのではないでしょうか。

 自分の感覚から離れずに知識を拡げていきましょう。そのようにして是非を判断していきましょうよ。

 5月27日の里山生活学校ブログから引用させていただきます

長らくブログを書く暇も無い生活でした。

最初から書くと長くなりますが・・・
1995年、福井県の「もんじゅ」というプルトニウム原発が
水蒸気爆発を起こして以来、原発について、
徹底的に勉強を始めました。
その時にたどり着いた自分なりの結論は、他の原発はともかく、
「もんじゅだけは必ず巨大事故を起こす」でした。
その後、簡易放射能探知機を購入しました。
個人的にですが、96年から自宅での空間線量計測をして来ました。

福島原発が爆発してからは、
もちろん毎日欠かさず放射線をチェックして来ました。
やや数値が高かったものの、大きな変化ではなかったので
岩手は、それほど汚染はないと思っていました。
盛岡のモニタリングポストも平常値(0,02〜0,03マイクロ程度)
が続いていました。

連休明け、県南のある先生が文科省から借りた探知機で
測定した数値をネットに公開していたのを見て、
「随分高い。おかしい。」と思い、
うちの探知機で、Tさんに測ってもらってきました。
するとやはり高いことが判明。
特に屋根の雨だれの下が、相当に高い。

時を同じくして、県内の牧草から、
基準値を超えるセシウムが検出されるという衝撃。
そこで、徹底的に、県南と沿岸南部を測定することにしました。

農繁期が始まり、厳しい日程でしたが、
最優先しなければならない事だと思い、
とにかく測りまくりました。

素人による測定ですし、簡易測定器によるものですから、
誤差もあると思いますが、いろいろな傾向は出てきました。

�地上0メートルと1mで測ると、
 盛岡のモニタリングポストよりはかなり数値が高い。
 問い合わせたところ、このポストは、地上14メートルに設置。
 地面に降り積もってセシウムからの線は、これでは測れない。

�県南部が高め。

�屋根からの雨だれの下が、とにかく高い。
 放射線管理区域の数値を超えている。
 子供は立ち入らないようにすべき。

�地面に散水すると、乾くまで数値が下がる。

�表土を5センチ削りとると数値が下がる。

こうした傾向は、保育、教育関係者に
少しでも早く知っていただきたいと思い、
急きょ、26日に水沢で報告会を開きました。

急な口コミでしたが、60名を超える方の参加があって、
先生方、保育士さん、市議さん、教育長さんにもお伝えできました。
今後、各行政機関が、
まずは、各地の測定に動いてくれることを心から期待します。


そんなこんなで、ブログの更新も途絶えた嵐の様な日々でした。

残念ながら、この里山にも確実に放射能は降り積もっています。
放牧した羊たちの糞や、木灰は、2割ほど高い数値が出ます。
鶏に、草の給餌はストップしました。

今後、生産物の放射能残留検査や
里山保育開催時の注意事項検討も必要です。

福島原発事故の大きさを考えれば、
東日本で被曝しない地域はほとんどないことは、
頭では分かっていたのですが、
実際に数値を見て実感すると、
岩手県でさえ厳しい現実と直面します。

親として、子供たちを放射能から守れるのか
生産者として、生産活動を続けられるのか。
地域として、汚染対策はとれるのか。
日本人として、原子力に依存しない日を迎えられるのか。

今となっては、放射能汚染のない日々がどれだけ幸せだったかを
思い知るばかりですが、これからを前向きに生きるためには、
「これだけの事故を経験しなければ、日本人は
放射能汚染の心配のない社会は作れなかったんだ」と、
思うしかないのかな。

     by 里山おやじ