「コクリコ坂から」いいね!

 暑いときにはやはり映画館。わが大崎市古川の地元シネコンも震災から4ヶ月の今月、やっと再開しました。8月までずっと1000円、さらに無料招待券も1枚もらいました。地元の良心的なサービス、こんな映画館が上映するのにふさわしいジブリの最新作を観てきました。

 いいですな〜、小ぶりですがとてもバランスのよい佳品です。
今55歳以上の人ならまちがいなくタイムスリップします。私もそうでした。昭和38年の横浜が舞台、ときは東京オリンピックの前年、白黒テレビの画面では坂本九が「上を向いて歩こう」を歌っている・・

 ストーリーは高校生の純愛もの、それをこの時代の雰囲気や、その頃の人々の心象風景のなかに溶け込ませて爽やかな物語にしたのはとてもすばらしい。何の気負いも大掛かりな仕掛けもありません。

 一番感心したのは、この原作を選んできたことです。「なかよし」という私たちの世代にはとても懐かしい少女月刊誌がありました。1980年代はじめにこの雑誌で連載されましたが不人気で失敗作といわれたこの原作を宮崎駿監督が発掘してきたんです。

 主人公の自己陶酔的な心象だけをえがき、男から見るとメタメタとした感じを抱いてしまいがちな少女漫画の純愛テーマをよく選んだものです。そこには宮崎監督の伯楽としての眼があります。

 ところで映画の監督は息子の宮崎吾朗さんですが、企画やプロデュースに父の宮崎駿さん、名人鈴木敏夫さんが加わったことでよい作品に仕上がったと思います。というのは宮崎吾郎監督の前作「ゲド戦記」は力不足の感が否めなかったので。

 一緒に作りながら息子の不足を支援し、よいところを伸ばしてやろうという気持ちを感じます。これこそがこの映画の一番の価値といえるかもしれません。

 さて、今回のことで私たちみんなが学んだらいいのにな〜と私が思うことがひとつあります。

 それは「磨きあげられたダイヤモンド」ばかりを見ようとしたり、それだけが価値あるものと思わずに「土くれのダイヤの原石」を見つけていこうよ。それを磨き上げていこうよ。自分のも人のも。ということです。

 宮崎駿さんが30年前の失敗作といわれた作品にキラリと光る輝きを発見したように。