とても不思議な「確率論」

 こんなタイトルで文章を書いたら、有名な人だったら袋叩きに会うかもしれません。なにせ現代の科学やら経済やらの根本原理のようですから。でも、誰が考えてもおかしいと思う話が実に多い・・・
 最近、NHKの特番で「伊方原発訴訟」について特集していました。1970年代前半から約20年間にわたり、原発設置をめぐって、推進側の国と反対側の住民が裁判で争ったものです。

 もちろん結果は出来レースで、一審から最高裁まですべて国の勝利、さらには原発は国の重要事項だから住民には反対する権利などないんだ、という裁定のおまけつきでした。

 最初の裁判で、原告側がメルトダウンの場合の被害や対策について質していたら、原子力委員会の代表の科学者がこう言うんです。

 「世界基準では10の−6乗(10万分の1)、私たちの場合は10の−7乗(100万分の1)以下の発生確率のことは想定する必要がない、つまりありえないということです。ですから何も考える必要はない」

 そうしたら、この裁判の間に1979年スリーマイル島でメルトダウンが起きたんですね。 さらに、その7年後1986年にチェルノブイリでまたもメルトダウンです。そして2011年福島原発。

 なんと1950年から数えて60年で3回です。これって10の−何乗になるんでしょうか?高名で優秀といわれる科学者の皆さん?

 驚くのは、裁判中に世界でメルトダウンが2回あったのに、なんらその影響が裁判にみられないということです。これって科学的とか、論理的といえることでしょうか?

 話題を変えてスペースシャトルについて調べてみましょう。原発と同じ科学技術の花形だからです。

 スペースシャトルの計画時、大事故の確率はどれぐらいと予想していたのでしょう。私はぜんぜんわかりませんが、もし70発に1回必ず全員死ぬ確率だよと計算していたら、乗る宇宙飛行士はいたでしょうか?

 実際には135回打ち上げて2回の大爆発、私の算数が間違っていなければ約70回に1回、約1,5%ですよね。

 地震や津波についてはどうですか?東北では10メートルを超える津波が1200年の間に3回も起きているじゃないですか。1000年に1回の確率といいいますが、小学生が計算してもそれだと400年に1回じゃないですか。

 経済ではリーマンショック、あの毒入り不動産債権は、米ロの核軍縮の推進などでロスアラモスをリストラされた核物理学者がウォール街に転職し、クウォントと呼ばれる金融工学者に変身し、核兵器製造に使う確率論を駆使して考案したものらしいです。

 破綻する割合は何億分の一以下、という謳い文句でしたが、結果的に十年くらいで大爆発・・・

 いったい、この確率論とやら、少なくとも現実世界において、まともな原理といえるのかとても不安です。

 喫煙者の死亡確率に比べてとか、飛行機事故の発生確率と比べてとか、ひどいのになるとこんにゃくゼリーの死亡率に比べて原発事故の確率は低いのだ、などと経済学者や経済評論家が堂々と話していたもんですが、そんなに安心して寄りかかれるまともな原理なんでしょうか?

 いったい、命に関わる科学を宝くじと同じように考えていいものなんでしょうか?

 でもソフィストの末裔である彼らのこと、きっとこんなことを言いそうな気がします。

 「だから、言ってるじゃないですか。100万分の1って。100万オクロックに1回って意味なんですよ、ご存知じゃなかった?」