このタイトル、冗談ではないんです。「今から40年後、米サンフランシスコ沖の水平線に、いくつもの人工島が浮かんでいるかもしれない。その名前は『アップルトピア』・・・」先日、朝日新聞の一面に出ていました。
既成の政治や社会に愛想が尽きて、「吉里吉里国のような独立国を創れたらな〜」と夢想する日々。
それは、強欲マネー経済に嫌気がさして、さらにその親戚のような「原発」という妖怪に脅かされるトンデモ世界から距離を置きたい。人間性を取りもどしたいという想いからです。
ところがなんと、強欲マネー経済の主や僕(しもべ)たちまで、似たような「独立国」を考え始めたらしいんです。
しかも、競争に特化した人間型金銭計算アンドロイドのことですから実行性能も抜群。さっそく具体化に着手したらしい・・・
私たちが最後の砦と考えていた「ローカルな独立社会」さえ、そのお株を奪い取っていくという強欲の醜悪さに、ほとほと人類に対する愛想が尽きそうです。
2012年02月27日 朝日新聞
国を見限り「選ぶ自由を」〈カオスの深淵〉より
■市場の正体
今から40年後、米サンフランシスコ沖の水平線に、いくつもの人工島が浮かんでいるかもしれない。
住むのは、既存の国を見限った人たちだ。彼らは、環境や制度など自分の好みで島を選んで「社会」を営む。各島の「政府」は豊かさをもたらすために、企業のように競争する。
こんな人工国家群構想の実現を目指すカリフォルニア州のシーステディング研究所を2008年に設立したのはパトリ・フリードマン氏。構想をユートピアならぬ「アップルトピア」と呼ぶ。グローバル市場の勝者、アップル社にちなむ。
彼は、規制を嫌い選択の自由を何よりも優先する「シカゴ学派」の総帥ミルトン・フリードマンの孫だ。祖父の継承者を自任する。前はグーグルのエンジニアだった。
「民主主義は多数派をつくらないと、社会を変えられない。でも、競争は違う。スピードがある」。意見の違う人たちが話し合って、合意や妥協を探る行為を無駄と考える。同じ考えの持ち主だけで「社会」をつくれば手っ取り早い。ほかの人はそうやってできたいくつもの「社会」の中から、好きなものを選べばいいというわけだ。パソコンやケータイの機種を選ぶように。
グローバル化に歩調を合わせない政治へのいら立ちも見える。「中国の農家がつくる砂糖が安くて良質でも、今の米国は自国産を優先する。中国の農家は、国境の外にあるというだけで富を得るチャンスを失う。フェアじゃない」と研究所の担当者。
社会とは市場、市民とは消費者――。
この構想に150万ドル以上の資金を提供するヘッジファンド代表のピーター・ティール氏は、規制がほとんどない国の設立を夢見る。オンライン上の決済システム「ペイパル」を立ち上げ、フェイスブックも多額の投資で後押ししてきた人物だ。
「08年の金融危機以降、市場への規制強化を求める市民を見ればわかる。今や自由と民主主義は両立しない」
すぐ実現する計画ではない。だが研究所には問い合わせが相次ぐ。米国を中心に500人超の資金提供や計画に使う大型船寄付の申し出もある。彼らは「自由」を声高に叫ぶ。「規制からの自由」だ。だが、規制を求める市民が望む「貧困からの自由」は視野にない。
『住むのは、既存の国を見限った人たちだ。彼らは、環境や制度など自分の好みで島を選んで「社会」を営む。』
ここまでは私も大賛成です。
しかし、つぎの文章にはゾッとします。
『各島の「政府」は豊かさをもたらすために、企業のように競争する。』
これって、国そのものが株式会社になるってことですか?たぶん金融関係の。
このような強欲マネー経済が、世界の経済バランス、地球環境のバランス、その他諸々の格差、ろくでもないことを生み出してきたんじゃないですか。
その落胆と反省から、新たな価値で動く地域社会を小さく創り始めよう、というのがこの種の運動の基本ポリシーと思っていました。
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この話をたとえれば、こんなことでしょう。
若いお母さんたちが、原発がいやで、田舎の山中に村を創ろうとしていました。
同じ時期、その近くの山中に経済人がやってきた。
彼らは、これから規制が厳しくて自由が制限されるから、山の中に小さな原発を持ってきて、たっぷり発電して銭もうけに励もう、と考え、村創りを始めた。
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記事はさらに続きます。
■競え競え 政治はいらない
「貧困からの自由」という夢を市場に託そうとしている国がある。そのために憲法まで変えた。
中米のホンジュラス。人口約750万人、コーヒーやバナナの輸出に依存し、国民の6割は国が貧困とする水準の生活を送る。外国企業を呼び込むために「人工都市」を造る。そこには国家の司法権さえ及ばないようにするという。
首都テグシガルパの大統領府で、オクタビオ・サンチェス大統領首席秘書官に会った。「麻薬組織がはびこり、治安は悪い。取り締まる警察は汚職が絶えない。政治が安定しないから、契約も実行されない。そんなわが国に、外国企業は来てくれない。必要なのは、政治と完全に切り離された場所なのです」
「政治と切り離された場所」とは、どんなところだろう。
まず、人が住まない広大な土地を一から開発する。そこで世界中の「経済特区」に勝る優遇措置を採用し、企業を呼び込む。企業は自由に活動する。
あらかじめ定められた法律や社会の基本ルールをもとに、外国の政府と協力して有識者らでつくる「外部委員会」が行政の動きなどを監視する。住民は移り住むのも去るのも自由だが、民主的手続きでルールを変えることはほぼできない。国家の根幹ともいえる司法・警察機能も、外部委員会が責任を持つ。ホンジュラスの司法当局は手が出せない。
問題を抱えつつも民主主義体制のこの国が憲法を改正したのは昨年。「人工都市」には司法権が及ばないことを明文化した。現在、北部のトルヒーヨや南部のアマパラなど5カ所を候補に、選定作業が進む。
「グローバル化が進み、豊かになれる機会は確実に増えた」。サンチェス秘書官が描くのは、グローバル市場の恩恵を享受する「人工都市」の姿だ。各国から集まった企業が雇用をつくり、技術移転を担う。それが各国民が豊かになる好機とみる。
現在、米国などの国外に仕事を求め、毎年7万人以上が流出している。だが、この都市が発展すれば「自国で複雑な技術や知識が学べ、自分で豊かになれる」からだ。
すでに韓国の大手企業などから問い合わせや視察があるという。「スピードがある。やはり市場は政治よりパワフルだ」
市場の力を最大限に生かす人工都市を造るアイデアは最近目立ち始めている。経済成長論で知られるニューヨーク大のポール・ローマー教授が提唱する「チャーターシティー」構想もその一つだ。
市場が機能するには「適切な統治」が欠かせないとの考えから、そのための社会制度の基本を定めた憲章(チャーター)に基づき、都市を造る。成長を阻む既得権益や政治的影響力を完全に排除する。
ローマー氏はホンジュラスのロボ大統領から、「人工都市」の外部委員会議長に任命された。「途上国は急速に成長できるし、先進国は投資で利益が得られる」と言う。世界中に数多くの「人工都市」を造り、それぞれが企業や人材の誘致を競い合って、富をうみ出す。これがローマー氏のビジョンだ。
いわば、民主主義を棚上げしてグローバル市場に治外法権の「植民地」を提供する政策。「植民地主義」批判に、ローマー氏は、途上国が自らすすんで制度を採用するのだから植民地とはいえない、と反論する。
利権や汚職などでがんじがらめになった政治にとって、競争によってスピーディーにものごとを進める市場はまぶしく映る。
テグシガルパの空港から街中心部まで車で走ると、外資系ホテルやマクドナルドなどが立ち並び、メルセデスなどの高級車とすれ違う。一方、少し遠くの丘の斜面にバラックのような家が密集しているのが見える。
地元の家具販売店で働くイネス・サブラさん(58)は「外資の飲食店のほとんどは地元企業がライセンス契約をしているだけ。治安が悪いから来たがらないんでしょう。15年以上前から、ずっと変わらない」と話す。「人工都市」計画が、企業の直接投資につながることに期待を込める。「外国の企業が来てくれれば、私たちの生活も、がらりとよくなると思う」
市場が社会に奉仕するのではなく、社会が市場に奉仕する。そうすれば、政治がさじを投げた「見果てぬ夢」が実現する。市場は「魔性」を秘めるのか。リーマン・ショックを経験しても、欧州の債務危機に振り回されても、人は市場に魅せられる。
この記事から見えるのは、原発と同じ構図。
経済的に貧しい国々が金の力に魅せられ、強欲人種の植民地になっていく・・・。自ら選んで。
今よりもっと、大変な時代がきてしまいそうです。
しかも、税金や規制がないということだけをメリットとして、やることはグローバル的な経済活動。
ハゲタカが集まって砦のような強固な巣をつくり、世界に羽ばたく構図じゃないですか。
大きなケイマン諸島を合法的に作るようなものです。
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『アップルトピア』という名前も心外です。
このような強欲マネー経済を否定したい私たちは、創造的なジョブズを尊敬していました。
ところが、私とは全く傾向が異なる強欲チームの面々も、別な意味でジョブズを尊敬していたというわけです。
だからこんな名前を付けたんですね。侮辱に近いと私は思うんです。
いったいジョブズが生きていても同じことをするでしょうか?
私にはそう思えません。
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まったく、リーマン人脈は浜の真砂のように尽きません。
まるで、春になると必ずご挨拶に来る、だれかさんの「水虫くん」みたいです。。。