『狼の群れと暮らした男』を読んでいます。実に読みやすく、おもしろくてためになる本です。読書の途中ですが「ハッと何かに気づかされる文章」にしょっちゅう遭遇します。
(著者:右)
次の文章を一読して「身につまされる人」は私だけではないと思いますが。。。
『狼の群れと暮らした男』 P78
「私たち西洋人はあまりにまじめすぎる、コヨーテ療法に期待すべきだ」と彼らはよく小言を言った。
コヨーテはいたずら好きのトリックスターで、私たちに恥ずかしい思いをさせそして笑わせる、死者と生者の道を歩く妖精のガイドである。
彼らは、かつて居留地に来た白人の話を私に聞かせてくれた。
彼は「自分発見の旅」でそこを訪れ、自分のふさいだ気持ちを明るくしてもらうため利口なインディアンから答えを見つけだそうと思っていた。
彼はきまじめな若者でたいへんな心配事をかかえていた。
部族の長老の一人が、青年に三日間森の中に入り、フン、すなわちシカ、クマ、ピューマ、コヨーテ、キツネ、オオカミの排泄物を見つけなさい、と命じた。
青年はたくさん集めて帰ってくると、こんどは長老がそれを水と混ぜてペーストにしなさいと言った。その作業にさらに二日かかった。
それで五日目になったが、夏の暑さでフンの臭いとハエが我慢できなくなった。次に長老が言った、棒切れで砂の中に自分を囲む円を措き、棒で作った溝に青年が作ったペーストを流し込みなさい。
そして最後に長老が言った、その円の中に座って、コヨーテがやってきて次にどうしろと言うか、それまで待ちなさい。
何時聞か経って青年は自分のやってきたことの意味が見え始めた。彼は三日かけて他人の糞を集めそのど真ん中に座っているのだ。
ようやく青年はその状況のアイロニーに気づいた。彼は、座ったまま笑い転げ、心配事から解放された。
イギリス人、元グリーンベレーの著者。
本人曰く「過ち多き青春時代を経て」、食い詰めて軍隊に入ったようですが、あまりに現実離れした現代の戦争に幻滅?を感じて除隊したようです。
しかし、サバイバルの訓練は「狼との共生」に大いに役立ったようです。
この本を読みながら感じます。
狼たちの世界はなんと「人間的な」ことか!