ノボ辞典 「丁寧」

 「丁寧」という言葉は実に貴重で素晴らしいものだと思います。生活も仕事も社会も国際関係もみんな、丁寧な考え方、丁寧な方法、丁寧な所作を心がけたらどれほどすがすがしいことでしょう。

 今日は自分自身のために「丁寧」について(少し深く)考えてみたいと思います。


(杉浦日向子『江戸アルキ帖』より)


ノボ辞典より

Carefulness【丁寧】名

 「丁寧」の語源は次のようであるらしい。

 「丁」とは「釘」、「気を集中して釘を打つ」こと。

 「寧」とは「やすらか」、「家の中に食器(皿)を置き、心を落ち着けてやすんずる様を示す」こと。

 つまり「丁寧」とは「集中して心をこめること」といえる。

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 「丁寧に生きる」とはどのようなことだろう。

 具体的にあげてみよう。

  「丁寧に生活する」
    丁寧に食事を作る、丁寧に食べる、丁寧に掃除する、丁寧に子供を育てる

  「丁寧に仕事をする」
    丁寧に調べる、丁寧に考える、丁寧に作る、丁寧に作業する、丁寧に教える

  「丁寧に人と付き合う」
    丁寧に話を聞く、丁寧に話す、丁寧にもてなす

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 「丁寧」と「ゆっくり」は同義と思っている人もいるが、それは違う。

 「丁寧」の「丁」が示すとおり、釘を打つときは決してゆっくり打ったりしない。

 気持ちを集中して、曲げないように思い切りすばやく打つ。

 この「集中=一気呵成」が「丁寧」の半分の意味である。

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 丁寧の基本をなすものは「丁寧な考え方」と「丁寧な動作」である。

 これに近いものがある。

 それは「茶道」「武道」「香道」「武士道」など「道」とつくものだ。

 これらは、自分自身も高め、他者にも感動を与えるものである。

 「道」は「丁寧」の極致といえるものではないだろうか。

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 「丁寧に生きる」ことは、私たちの日常生活すべてに関わることである。

 これを上記の「道」に喩えるなら、「人道」と言ってもよいのではないだろうか。

 一般的に使われる「人道的」という言葉も、「丁寧に相手を理解しようとする気持ち」という意味にとらえると、「丁寧」と深い関連がある言葉である。

 このように、「人道」とは決して難しいものではなく、私たちが「丁寧に生きる」ことで日々高めていくことができる「徳」である。

 なによりも「丁寧」が素晴らしいことは、自分自身にとっても他人にとっても、ともに喜びにつながるということにある。

『ノボ辞典』目次
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 ノボ辞典「デジタル」
 ノボ辞典「丁寧」
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 ノボ辞典「選挙」
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 ノボ辞典「必要悪」
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