漫画家の血と汗

 小さい頃よく叱られました。「漫画ばっかし読んでないで勉強しなさい、本読みなさい!」と。ですから漫画家を偉大な芸術家と思ったことはありませんでした。今までは。
 NHK「ゲゲゲの女房」にはまって以来、漫画家の様々な「とてつもなさ!」に気がつき、圧倒されるようになりました。

 小中学生の頃は、水木しげる、手塚治虫、石ノ森章太郎、ちばてつや、赤塚不二夫、藤子不二雄、横山光輝、桑田次郎、楳図かずお、山上たつひこ、永井豪、さいとうたかを・・・

 高校以上になって「ガロ」系の作家たち、つげ義春、永島慎二、林静一、白土三平、滝田ゆう・・・・

 さらに大人になってからはアニメ系、宮崎駿、高畑勲・・・

 四コマ漫画系なら長谷川町子、サトウサンペイ、秋竜山・・・ 

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 先日の夜、小中学校時代漫画家志望?だった同級生を交えて「漫画懐メロ大会」みたいに盛り上がったんです。

 いや、「お宝漫画鑑定団」かな?

 手塚治虫の『新宝島』初版を持っているとかいないとか。。。
 

 幼年時代や学生時代は、漫画家の産みの苦しみを考えることもなく、ただ読み飛ばしていました。

 実は血と汗がにじんでいた漫画のページを。。。

 今では、その血や汗がページから生々しく透けて見えるのです。

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 漫画家は本当にスゴイ!凄かった!

 テーマを思いつく、ストーリーを考える、現実や歴史を調べる、人物や道具を創造する、コマ割りをする、絵を描く。。。

 さらに、過酷な締め切りに間に合わせる、何本も並行して連載する。。。

 さらにさらに、貧乏に耐える、世間の評価に耐える。。。

 生涯に描く絵は何万ページにもなることでしょう。

 たぶん六千点も描いたというルノワールにだって、決して負けない量でしょう。

 これだけの苦労をしても、映画なら黒澤明のように「芸術家」として評価される人はほとんどいませんでした。

 近くまで行ったのは手塚治虫くらいだったでしょう。それにしても壮絶すぎましたが。

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 思い起こせば、実は勉強にだって漫画が役に立ちました。

 私が幼少時に字を覚えたのは、幼き頃から漫画中毒だったからです。

 歴史だってそうして覚えました。

 「三国志」なんかも、横山光輝の漫画を読んで記憶に残りました。

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 水木しげるの漫画を今見ると、気の遠くなるような点描にためいきをついて見とれてしまいます。

 一枚の絵に費やす時間の信じられない長さを感じて。。。

  →幻想芸術家「水木しげる」
 
  →マンガ家の一日

 宮崎駿「風の谷のナウシカ」原作漫画を今読んでいるんですが、構想のあまりの質の高さに圧倒されて、ページをパラパラめくることができなくて進みません!

 「三国志」だって当時の習慣、服装、彼の地の風景やら、どれほど多くの調査が必要だったものか。。。

 漫画は絵ですから、文章で表すよりもよっぽど正確さ、精密さを必要とすることだったでしょう。

 手塚治虫に至っては、もう「神」というよりほかありません。

 「創造神」に乗っ取られた?人間「手塚治虫」の崇高・壮絶な人生、その苦しみはいかほどであったことでしょう。。。

  →ブラック・ジャック創作秘話

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 漫画家は「総合芸術家」といえるのではないでしょう?

 哲学者であり、歴史家であり、作家であり、詩人であり、画家であり、そして何よりも職人であります。

 漫画家は社会でもっともっと尊敬されてしかるるべきだな〜と、強く思うこの頃です。

 といっても、今の作家はまったくといっていいほど知りません。

 ですから、私がそう思うのは「昔」の漫画家なんです。

 でも、今の漫画家にもきっと昔の大漫画家に匹敵する人たちはいるんでしょうね〜、たぶん。