不採用にもめげず

 「不採用にもめげず、不合格にもめげず、そんな人に私はなりたい」そう思わないと生きていけませんよね。
 もう古い話となってしまったかもしれませんが、サッカーワールドカップは残念でしたね。

 とばっちりを受けた人も多いのではないでしょうか。

 わが家も女房(「女棒」と変換されて一瞬ビックリ!)が大のサッカー好きです。

 昨日の早朝トイレに行ったら居間が明るい。テレビ観戦していました。

 やがて朝ご飯、女房はムスッとした顔でキュウリと味噌汁だけの朝食で。。。


(私のワールドカップ Wiiヘディングゲーム!)

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 話は変わって先週末のわが会社。

 来春新卒予定4名の入社試験をしました。

 今年は豊作でみんな採りたい、っていう学生さんたちでした。

 ところが懐はそんなに豊かではないため定員は2名。

 苦しい気持ちで2名は不採用とさせていただきました(つらい。。。)

 どうかいい会社へ就職できますようにと祈らずにはいられませんでした。

 たぶんだいじょうぶとは思いますが。

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 さて、人生ではさまざまな場面で「不採用」「不合格」の方が圧倒的に多いはずです。

 しかし、スポットライトは「採用」や「合格」だけにあたるので、それ以外はまっくらで誰も見えません。

 「てんとう虫」という雑誌をめくったいたら、高橋源一郎さんがそのまっくらな場所に懐中電灯のような光をあててくれました。

 世界の名作とされる本も実は「不採用」だらけだったのだ、というお話しです。

 すこし勇気をもらえますよ!

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『まことに残念ですが…』

 今回は、わたしの愛読書を紹介しよう。

 本のタイトルは『まことに残念ですが…』(アンドレ・バーナード著、中原裕子訳、徳間書店刊、品切)。

 これはすごい。なにしろ、タイトルが途中で切れているから、ほんとうの意味はわからない。

 なので、みなさんに、この 「…」 で隠された部分をお教えしょう。

 「不採用!」である。ガーン……。

 誰だって、そんなものは受けとりたくないだろう。

 これは、「不採用通知」ばかりを集めた本なのだが、「ただの不採用通知」 ではない。

 なんと、後に「不朽の名作」といわれることになった作品を読んで、「つまらん!」と判断した編集者たちが書き送った不採用通知なのだ。

ウェルズの『タイムマシン』

 まず、有名どころから見てみたい。

 「……たいして将来性のない、マイナーな作家だ。この作品は、一般読者にはおもしろくなく、科学的知識のある者にはもの足りない」

 こう書かれた作品はというと、現代ではSF小説の元祖といわれている、ウェルズの『タイムマシン』だ。

 「新しい」作品は、いつもこんな風に、排除される可能性があることを忘れてはならない。

プルーストの『失われた時を求めて』

 もう一つ、これもいまや、二十世紀の小説の最高傑作といわれている、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』(の第一巻『スワンの恋』)
を読んだ編集者の手紙。

 「ねえ、きみ、わしは首から上が死んじまってるのかもしれんが、いくらない智恵をしぼってみても、ある男が眠りにつく前にいかにして寝返りを打ったかを描くのに、なぜ三〇ページを必要なのか、さっぱりわからんよ」

ピカソの絵

 もちろん、ピカソの絵だって「なんだ、この子どもの描いたラクガキみたいなクソ絵は!」といわれていたこともあるのだ。

 自分の作品にオリジナリティーがあると信じたら、いくらひどいことをいわれても我慢しろ、ということなのかも。

ガートルード・スタイン『小説アイダ』

 でも、こんな返事が来たら、やっぱりきついと思う。

 「わたしはたったひとりです、たったひとり、たった。たったひとりの人間で、いちどにひとりにしかなれません。ふたりでもなく、三人でもなく、たったひとり。たったひとつの人生を生き、一時間はたった六〇分。たったひとそろいの目。たったひとつの脳。たったひとり。たったひとりで、たったひとそろいの目で、たったひとつの時間とたったひとつの人生しかないので、あなたの原稿を三回も四回も読めません。たった一回も読めません。たったいちど、たったいちど見ただけで十分。たった一冊も売れないでしょう、たった一冊も、たった」

 これは、ガートルード・スタインの名作『小説アイダ』 への「不採用通知」全文だ。

 これを書いた人は、直前になにか、よほど腹に据えかねるようなことがあったのだろうか。

 正直にいって、こんな文章だけはもらいたくないです。というか、この文章、けっこう名文ではないだろうか。

 編集者に、これはど情熱的な否定の文章を書かせるだけでも、そうとうすごいと思う。

ハリー・クルーズの短編集

 もはや、編集者に目がなかった、ということなんか遥かに超え、「不採用通知」史に残る傑作となってます。

 「火にくべよ、お若いの。焼いてしまうがいい。炎がすべてを浄化してくれるだろう」

 これは、アメリカの有名な作家ハリー・クルーズの短編集を読んだ編集者のことば。

 でも、これぐらいでくじけちゃいけない。

 面白いのは、誉めているのに、不採用通知を送ってきた編集者がいること。こんな感じである。

 「いやあ、きみ、これは傑作だ! なんと完壁に練ってあることかー・この鮮やかな色彩、この情熱−・まことにすばらしい。じつに詩的だ。わが社じゃなくて『ハーパース・バザー』誌に持っていきたまえ。あそこならこの作品の真価をわかってくれるだろう」

ウィリアム・サローヤン

 ふう。こんな風に「不採用通知」が一冊の本になるぐらい存在しているのは、日本と異なり、欧米では、いわゆる文学の新人賞はほとんどなくて、とりあえず作家を目指す人は、出版社に直接送ってみるしかないからだ。

 その結果として、わたしの大好きなウィリアム・サローヤンのように、はじめて原稿採用通知が来るまで受けとった断り状の山は、なんと高さ1mもあった(!)というようなことまで起こるのである。

 いやあ、そんな世界、ちょっと耐えられんなあ……。

 正直、ガートルード・スタインとハリー・クルーズっていう名前ははじめて聞きました。

 それにプルーストは高校以来何度か挑戦するも第一巻入り口で挫折。。。

 サローヤンは『我が名はアラム』数十年前に読んだがほとんど記憶なし。。。

 本好きとはいえ、こんな程度とは恥ずかしい限りです。

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 最後は、駄川柳で「元気づけ」といきますか!

  「不採用 あっちのレベルが 低いだけ」

  「不採用 修行と思えば 感謝かな」

  「不採用 独創世界の 入場券」

 えっ!これも不採用。。。やっぱりな〜。