中華そばの詩(うた)

 「三丁目の夕日」にほしかったな〜!あの頃の「中華そば」を家族で食べるシーン。先日久しぶりに食べたラーメン屋さんで、一瞬タイムスリップ。
 それは「幸楽苑」という昔風の「中華そば」を出しているチェーン店での出来事でした。

 ふだんあまり食べない(カロリーが高いので)ラーメンをなぜ食べたくなったか?

 実はその日、定例の大腸内視鏡検査を受けて、腹の中がまさに空っぽの状態だったんです。そこでサバイバルの本能が目覚め「こってり系」に引き寄せられたわけです。

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 さて、大繁盛の昼時、しばし待たされ案内された席の壁にはドンとこんな掲示板がありました。

 ラーメン(中華そば)が来るまでの間、しばし夢中になってその文章を目で追いました。。。

 そして一瞬のタイムスリップ。

 この掲示板にかかれた店主の思い出と全く同じ光景が蘇りました。

 掲示板に書かれていた文章を記しましょう。

 この文章はすばらしい「詩」だと思います。

 中華そばが大好きだった。
 祭りや映画の帰りにくぐる
 紅いのれんに、胸が躍った。
 ラジオの流行歌、
 アルミのテーブル、
 スープとコショーの香り。

 どんぶりから立ち上がる湯気に、
 お父ちゃんが目を細める、
 あんまり急ぐとやけどするよと
 姉ちゃんに笑われたっけ。
 昭和二十九年、あの頃の中華そばは、
 家族のたまのご馳走だった。
 
 バスが砂けむり上げる田舎町の食堂、
 裏で風呂を焚く薪の匂い、
 そんなひなびた記憶を
 この店の味は、思い出させる。

 親父から受け継いだという、
 雪国会津の中華そば。
 手間のかかる多可水熟成麺も、
 ガラスープに、鰹と煮干のだしを
 合わせるやり方も、
 創業の頃から変わってない。

 会津っぽ気質の、真っすぐな味。
 汗をかきかき夢中で食べた、
 思い出の中華そばだ。

             店主敬白

 全く同じような光景を想い出します。

 一番のご馳走だったあの「中華」の匂い。一緒にすすっている父母の顔。。。買ったばかりの白黒テレビ。そばには火鉢。


(→この画像のサイト)

 私の実家の二軒隣が、とても味の良い「中華そばや」さんでした。

 そこで使う鰹節は私の母親がやっていた小さな食料品店から買っていました。

 たまに中華そばやさんの店で食べるとき、「中華」のつゆを残すとオヤジさんからしかれたものです。

 「おらたちはそのスープに命かけてるんだから、残さず飲んでいきなさい」と。

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 そういえば。。。と別なことを思い出しました。

 この感動的な詩を掲げた社長さんの記事が、最近新聞に載っていたな?と

朝日新聞2012.5.17

●なぜ今?百年の計がない 

ラーメンチェーン「幸楽苑」社長・新井田傳さん

 全国に472店舗を持つラーメンのチェーン店を経営しています。私は福島県の会津の出身で、本社は郡山市にあります。ラーメンは大衆的な食べ物。1円でも安く、おいしいものを提供するよう努めてきました。

 6年前には390円のラーメンを290円に値下げしました。麺やギョーザなどの生産を京都など3カ所の自社工場に集約し、各店舗に届けています。「今世紀の前半はデフレ経済から脱却できないだろう」。そういう見通しでコストを抑え、値段も下げて、会社を成長させてきました。

 企業経営も国家経営も、基本は同じだと思います。いかに世の中の変化を先取りするか。たとえ先取りはできなくても、どう状況に敏感に反応するか。それによって、正しい方向に導くということです。

 消費税率を上げなければ、国の財政が持たないのは確かでしょう。それ自体は分かります。

 ただ、この不況です。増税のタイミングとしては極めて悪い。着手するのなら、もっと早く結論を出すべきでした。これは民主党の責任だけでなく、自民党政権時代のことも合わせて言っているんです。経営者の視点から言わせてもらえれば「結論の先送り」「優柔不断」が、一番いけません。

 私は、我が社を少なくとも100年存続させるのが夢なんです。しかし、政治家には百年の計を持った人が見当たらない。理念に基づいた国の経営をしないと、その場その場の対処策で終わってしまうんじゃないでしょうか。

 我が社は来月、バンコクに海外1号店を開く計画です。タイは非常に活気があり、ちょうど日本が高度経済成長にさしかかっていたころのようです。国も会社も目標に向かってまっすぐ進んでいるとき、やる気が出てくる。会社なら、従業員たちが利益を出して賞与を受け取る。そうした動機付けがあって、人は頑張るんです。

 じゃあ、消費増税は何を旗印にしているのでしょう? 納得できる説明がなければ、国民は協力する気が起きません。

 しかも、東京の景況感と地方の景況感には大きなズレがあります。東日本大震災と原発事故の傷を負った福島では、精神的に立ち直っていない人がまだまだ多いのです。そうした方々は、増税に反対する気力もないくらいでしょう。自分たちの明日を考えるのが精いっぱいだと思います。

 消費増税が景気にいい効果をもたらすことはありません。必ず一時的に冷え込みます。それでも増税をするというのなら、民主党は実行すればいい。私は経営者の意地で、逆に「チャンス」ととらえます。増税分を価格に転嫁せず、さらに値下げしてでも生き抜いてみせます。
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 にいだつたえ 44年生まれ。福島県会津若松市で父が営んでいた6坪の食堂を、70年に株式会社「幸楽苑」とする。2003年、東証1部上場。店舗は青森県から兵庫県の間で展開中。

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 「幸楽苑」という会社は福島県郡山市が本拠地です。今、放射能問題でとても苦しんでいる地域です。

 それにも関わらず、お店は繁盛、そして元気な提言を続けている社長さん。逆転の発想と挑戦の意欲を持ち続けています。

 思えば、この会社が上場する前の1996年、私はこの会社にある商談で訪問したことがありました。そのとき、「なんて質素なんだろう」と感慨にふけった思いがあります。(商談は成立しませんでしたが)

 さらに、そのとき商談の道筋をつけていただいた方と先日フェイスブックで10年ぶりくらいに出会い、旧交を温めました。

 そんなことまで思い出させてくれた、久しぶりの「中華そば」の匂いでした。。。

参考
 私たちの親はベンチャーズ
 三丁目の夕日はなぜまぶしい?
 三丁目の夕日と「今」
 みんな自営のサラリーマン