ケーズデンキと三国志

 こんな経営者がいると思うとホッとします。ケーズデンキの理念は「がんばらない」だそうです。
 「人の行く裏に道あり花の山」を地で行く戦略。それがけっこう当たっているとは嬉しいことです。
 
 ライバル各社の戦略もそれぞれ個性的で、まるで「三国志」のようです。

 ケーズデンキは「蜀」、その会長は「劉備」といったところでしょうか。

朝日新聞 2013.7.3

ケーズデンキ、したたか“逆路線”

 水戸市生まれのケーズは1990年代後半、同じ北関東が地盤だったヤマダ電機(群馬県高崎市)、コジマ(宇都宮市)と三つどもえの値引き競争を展開した。「YKK戦争」と呼ばれ、家電量販の世界は戦国時代に突入した。

 その後、ヤマダは業界で初めて売上高2兆円を突破し、業績不振のコジマはビックカメラの傘下に入った。明暗分かれた両ライバルと比べ、ケーズ最大の特徴は、その経営理念だ。

 「がんばらない」。ケーズデンキを展開するケーズホールディングス会長の加藤修一(67)が掲げる理念は、かなり風変わりだ。

 加藤会長は「劉備」のごとく、人を一番大切に考える方のようです。

 その象徴が「ノルマなし」「残業なし」だ。

 これは「一番大切なのは社員。次いで取引先、3番目がお客」という加藤の理念にもとづく。

 高い目標をかかげて社員に無理をさせると、短期的には業績が上がるが、やがて息切れしてしまう。無理な売り込みはお客のためにもならない――。

 しかも、この会社には軍師「諸葛孔明」もいるようです。そのしたたかで独自な合理性追求。

 一方、合理性も追求している。郊外での出店にこだわるのは、土地代や賃料が都心より安いからだ。お店のつくりも共通化し、お金はなるべくかけない。

 値札をみると、他の家電量販店とちょっと違う。他の量販店でおなじみの「ポイント還元」の表示がないのだ。どれも「現金値引き」にこだわる。

 買った金額に応じてポイントをつけ、再びお店に足を運ばせるのは、業界では当たり前の「囲い込み」の手法だ。だが、ケーズは「お客を縛るのはよくない」とそれを否定する。

 店舗戦略も他社と異なる。都内にある10店は、どれも府中本店のように都心を外した立地だ。都心のど真ん中でしのぎを削る業界他社とは一線を画している。

 さて、業界NO1のヤマダ電機はといえば、まさに「魏」「曹操」そっくりです。

 同じく2年連続で減収だったヤマダ電機は、全役員を降格し、会長だった山田昇(70)が5年ぶりに社長に復帰した。創業者の強烈なリーダーシップで社内の引き締めを図る。

 それでもケーズ社長の遠藤裕之(62)は「社員に無理に売れとはいわない」と動じる様子はない。

 ケーズの独自路線について、山田は「2番手経営だから、うちについてくればいい」と突き放す。「いなくなって、いちばん困る相手はうちだろう」

 ヤマダの逆を行く戦略は、ライバルの存在で自分を引き立たせる「したたか路線」ともいえる。

 ヤマダ電機会長の自信満々でパワフルなトップダウンは、まさに勇ましき「曹操」、日本なら織田信長?を見ているようです。

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 業界三位のヨドバシカメラは、駅に隣接し地の利を生かした立地戦略で一貫しています。

 まさに南海の利を大いに生かした「孫権」「呉」にたとえられるのではないでしょうか?

 電機業界三国志、どのような結末となるのやら。


(売上高は2013年3月期、店舗数は今年3月時点。ビックカメラの売上高は12年8月期、店舗数は今年2月時点)

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 私は、多くの三国志ファンと同じように「蜀」のケーズデンキにがんばってもらいたいな〜と思っています。

 なにせ、私もかつてこの会社の「がんばらない経営」というのに影響され、三年前から会社年度方針は変えないことに決めたからです。

 それは「あらゆる面で無理をなくす」です。

 私の会社もノルマはなし、業績(必達)目標もなし、かわりに「見込み」を出します。

 「見込み」に対して「経営」の方を合わせていくことにしました。

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 そのきっかけとなったのは、リーマンショックの一年後、大きな津波が我が社にもやってきて大変な思いをしたことでした。

 あきらめの心境の時に出会ったのが、「がんばらない(無理しない)」というケーズデンキの理念でした。
 
 無理な営業をしても結局「利益」の先食い、「トラブル」の蓄積にしかならないことに気づきました。

 何よりも「質」の向上ができなくなってしまうことが、実は致命的なんだと気づきました。

 きっとケーズデンキの会長さんも、かつて「つらい経験」をしたことがあって、その時思い切って(よき)開き直りをしたのだろうと思うんです。

 そして自らの囚われがふっきれて、自分が一番楽になったと思うんです。(勝手な想像ですが)

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 しかしそんな我が社でも、たった一つの「無理」は認めています。

 それは、「無理をなくすために行う一時的な無理」です。