永平寺の懺悔と勇断

 日本海の原発銀座、福井県にある曹洞宗大本山「永平寺」が「脱原発」に思い切り舵を切りました。同宗の信徒として嬉しいかぎりです。
 本日の朝日新聞の「声」欄にのった投稿です。

原発選ばぬ生き方に変えたい

無職 川崎 和弘(千葉県成田市 59)

 福井県にある永平寺が11月2日、脱原発の視点から生活や生き方を考えるシンポジウムを開く。県内には原発14基が立地し、高速増殖炉「もんじゅ」がある。

 文殊菩薩(ぼさつ)から命名された「もんじゅ」はトラブル続き。来年度は高速増殖炉の実用化に向けた文部科学省の研究開発費が削減されそうだ。仏様の名を汚すのは罰あたりだ。さらに使用済み核燃料を再処理する核燃料サイクルは停滞し、放射性廃棄物などを埋め立てる最終処分場は場所すら決まっていないという。

 いま国民に求められているのは、この深刻な課題に真剣に向き合って考えること。シンポのテーマは「いのちを慈しむ〜原発を選ばないという生き方」という。

 野田佳彦首相は「次世代に迷惑をかけないために増税する」という。では、放射性廃棄物処理を10万年後まで続けることをどのように考えているのだろうか。私はすべての原発を即刻廃止すべきだと考える。

 こちらは10月14日、毎日新聞の記事です。

シンポジウム:「原発は仏の教えに背く」

永平寺「ふげん」など命名懺悔−−来月2日

 曹洞宗大本山永平寺(福井県永平寺町)は11月2日、原発の是非を問うシンポジウム「いのちを慈しむ〜原発を選ばないという生き方」を開催する。同県敦賀市の新型転換炉「ふげん」(廃炉作業中)などの命名にも関わったとされている寺が、初めて企画した。福島第1原発事故を踏まえて、事故が起きれば子孫にまで影響が及ぶ原発は仏教の教えに相反するとし、これまでの認識不足への反省を込めている。【山衛守剛】

 永平寺は、横浜市の総持寺とともに、国内に約1万5000の寺と約800万人の信徒を抱える曹洞宗の大本山。

 永平寺の布教部長で、今回の催しを運営する「禅を学ぶ会」事務局長の西田正法(しょうぼう)さん(56)は、「使用済み核燃料を残し、DNAに作用する放射線という危険をはらむ原発は、子孫への負の遺産となる。命を長い時間の視座に置く仏教の教えと相反する」と説き、「今の生活を見直すきっかけにしてほしい」と呼び掛ける。

 西田布教部長によると、いずれも菩薩(ぼさつ)の名前に由来する新型転換炉「ふげん」、高速増殖原型炉「もんじゅ」(敦賀市)の命名に、寺が関わったという。西田布教部長は「原発に対する認識が足りなかった私たちの責任は重く、間違いだった。懺悔(さんげ)することから始めたい」と戒めている。

 シンポジウムには、反原発運動に携わってきた同県小浜市の明通寺住職、中島哲演さんや、各地で震災体験を語っている福島県飯舘村の酪農家、長谷川健一さん、作家の朴慶南(パクキョンナム)さんらが参加する。

 同町の「四季の森文化館」で午後1時開始。定員400人。入場料500円。問い合わせは同会事務局(0776・63・3456)。

 反原発、脱原発と聞けば、経済成長を妨げる非国民かと考え、毛嫌いする人々が多いのも事実です。そしてそれらの人々は、能力や競争心が高く、経済社会のエリート層に属している人が多いことも特徴です。

 原発推進と脱原発の両派は、保守とリベラルの対立のようにお互いを理解することはとても困難でしょう。

 しかし、ほとんどの日本人の心の原点には「仏様」があります。多くの国民が、死ぬときは必ずお世話になっています。

 私たちに共通の魂である「仏様」、それをになう「お寺」が、「生き物」として「人間」としての観点から、原発について向き合い、あるべき姿を提言するということは、今の時期とても有効です。

 永平寺は私も十年くらい前に訪れましたが、お堂の中に戦争に反対するメッセージを静かに、しかし堂々と掲げていたことに感銘を受けたものでした。

 そして、今、過去の原発推進に荷担してきたことを懺悔し、反対の行動に大きく踏み出したということに宗教者としての良心を感じ取りました。

 きっと道元禅師も喜んでいらっしゃることと思います。