反原発は幻想か?

 身近な人との口論くらいいやなことはありません。原発問題は、政界や経済界のエリート対一般庶民の戦いと思っていましたが、一般庶民の間にも高い壁が。。。どのような話し合いが必要なのでしょうか?
 新聞にはこんな投書が。これを読んで、今この方がここにいたらなんと言ったらいいんだろう。。。そして説得できるだろうか?と想像し、気持ちが暗くなりました。


2012.6.2朝日新聞「声」欄より

反原発論者は暗い現実を見て

 原発再稼働に反対する意見が多いが、私は一刻も早く再稼働すべきだと考える。このまま原発が再稼働しなければ日本が自滅してしまうのを、座視できないからである。

 この夏の深刻な電力不足の問題だけではない。節電で仮に乗り切れても、電力料金の値上げによって製造業の価格競争力は失われ、日本の輸出産業は衰退する。

 同時に発電燃料の輸入の増加で日本の貿易赤字が増え、経常収支も赤字に転落する懸念がある。さらに失業者も増え、税収は落ち込み、国民生活を直撃することだろう。

 反原発論者は美しい夢ばかり語り、このような暗い現実を見ようともしない。原発は廃炉にしない限り、再稼働しなくても災害に対する危険性は大きく変わらないと思う。

 だが、全原発をすぐ廃炉にしたら、その費用は国家予算に匹敵するほど膨大になる。その費用も電気料金に上乗せすれば国民生活は破綻(はたん)する。経済が衰退しても安全性さえ確保できればいいという考えは「幻想」にすぎないということを、反原発を支持する人々は銘記すべきだと思う。

 投書の方は、きっと利権にはまったく関係なく、本心で私たちの生活を心配している大変マジメで善良な方に違いありません。

 このような方々が、自らの善き信念のもとに原発維持を支持しているのでしょう。誰よりも善良な市民としてのプライドを持ちながら。

 ですが。。。正直私は、友人とか親しい人がこのような内容の話をしたら、とても空しく、悲しく、何も反論する気が起こりません。

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 原発の危険性、原発以外の可能性などを考えず、「最もシンプルなロジック」を無意識に求めてはいないでしょうか?

 経済は「安全」と「安心」の上に乗っているということを軽視してはいないでしょうか?

 飛行機のファーストクラスに乗って、権力をにぎる「為政者とともにいるような居心地の良さ」を無意識に求めてはいないでしょうか?

 「現実的」とかいう幻想にガッチリとはめ込まれ、「自由闊達な精神や感受性」、「挑戦の意欲」を失ってはいないでしょうか?

 私はそういう傾向に、「干物」のような精神を感じてしまい空しくなります。

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 同じ日の紙面には正反対のこんな記事も。

 話し合うより別な方法がいいのかな?とも思ってしまいます。


鈴木悌介さん=鈴廣かまぼこ副社長

節電ビジネス、芽つまれた

 「経済界は原発推進」とひとくくりにされることに違和を感じ、今年3月、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(エネ経会議)」を立ち上げました。日本商工会議所の青年部会長だった時に築いた人脈を軸に、会員数は約450人。目指すのは、再生可能エネルギーを活用した地域の電力自給です。単純な反原発運動をするつもりはありません。「反」の旗を振って誰かを説得するより、原発なしでも安心して暮らせる社会を作ってしまった方が早い。そう考えています。

 私どもの会社は創業147年、江戸末期からここ小田原で商売をさせてもらっています。地域に根ざした中小零細の商売人の多くは、「今」をどう「次」につなぐか考えています。自分の根っこがあるこの土地、ふるさとは、未来から借りているという思いが強いんですよ。

 借りたハンカチは洗濯してアイロンをかけて返すのが日本人の心性でしょ。ふるさとも、少なくとも汚すことなく未来に返したい。一度事故が起きれば取り返しがつかない事態となり、使用済み核燃料も処理できない原発は当然、相いれませんよね。ともかく今夏は原発なしでやってみたらいい、できるはずだと、私は今も思っています。

 私どもの会社は昨夏、電力使用量を前年比約25%カットしました。今年も同程度の節電を予定し、来年をめどに太陽光や太陽熱を活用したエネルギー自給システムを導入する予定です。

 今夏の差し迫った課題は、ピーク時の電力使用量カットで、有効な手だてはたくさんある。ただ中小零細企業は、オヤジが1人で経理から設備から全部みているところが多いので、技術的なことに関わる余裕がない。電力が足りないと聞かされればそれは困る、だったら再稼働もやむを得ないと思ってしまう。エネ経会議では、そんなオヤジたちと上手に節電するための情報共有にも力を注いでいます。

 カッコつけずに言いましょう。私たち商売人は銭勘定、損得で動きます。政府が「原発は再稼働させない」とはっきり宣言すれば一斉にソロバンがはじかれ、市場が動いたはずです。

 例えば、冷凍庫。10年前の製品と比べたら電気代は約半分です。でも今はまだ買い替えない。なぜか。再稼働し、電気料金が下がったら損だというスケベ心があるからです。再稼働がないと決まれば、500万円の設備投資をしても5年で元が取れる、となって買い替えが進む。省エネ効果の高い製品開発にも力が入るでしょう。その結果、総電力使用量は下がるし、新しいビジネスチャンスも生まれる。なのに易(やす)きに流れる政府がその芽をつんでいる。ソロバンはじくの、下手ですね。実にもったいないと思います。
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 すずき・ていすけ 55年、神奈川県小田原市生まれ。老舗かまぼこ店「鈴廣(すずひろ)」の次男で、長男の社長を支える。エネ経会議世話役代表、小田原箱根商工会議所副会頭も務める。

 「真の経済価値」というものがあると私は思うんです。

 それは「相対的計算優位性」のことではなく、「挑戦と独創による新市場の開拓」という経済価値です。

 かまぼこやの鈴木さんはまさにそれを言っています。

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 最初に紹介した投書の方は、真の経済価値についてもっと考えてみる必要があると思うんです。


→この画像のサイト

 「欠乏があって新しき創造がある」ことを。

 今あなたが守りたいと思っている「産業」というものは、そこから生まれてきたのだということを。

 そこには、今苦しくても未来を夢見るという「挑戦」があったのだということを。

 そして、産業の創始者たちの多くは、人間や生き物にとって「善きこと」をしようと思ったはずということを。

 その上に成り立っているのが「現実の安定」とするなら、その「基盤」を大事に考えることこそ「真の現実家」といえるのではないでしょうか。
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 でも、やはり通じないかな。。。。。。

 アメリカとか総理とか都知事とか、権威的な人がそう言わない限り。。。

 あるいは、もう一度大事故が起こらない限り。。。

 そのときはもう取り返しが付かないかもしれない。。。