ひと味違った「わらわら」

 「わらわら」とは宮城の方言です。「わらわらとさいん!」は「急いでしなさい!」の意味。同じ「わらわら」という名の昔風?道具がありました。
 最近知り合いから頂戴したこの道具、名前が「わらわら」とのこと。

 何の道具かと言えば「大根おろし器」なんですよ。

 木の箱に、クシのように何枚も付けられたギザギザの「おろし歯」

 これは竹で作られているんですね〜

 さっそく大根をおろしてみました。

 結構力がいりますが、ザクザクとおろされる大根。普通の「おろし金」でおろしたのとはは全く違う見た目です。

 食べてみました!

 ザクザクの食感は何か荒削りのかき氷のような?食感。

 香りも甘みも、部位によっては辛みもひときわで、とってもワイルドな食感です!

 今朝は食卓にすでに出ていた納豆に混ぜていただきました。

 料理は目で味わう、鼻で味わう、耳で味わう・・・決して味覚だけではありません。

 この大根おろしは口の中の「触覚」を心地よく刺激してくれました。

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 宮城県の明治村と呼ばれる「登米町」で販売されているようですが、全国に似たような製品があるようです。

 こちらが「わらわら」なら向こうは「鬼おろし」とかユニークな名前の兄弟たちです。

 きっと、江戸、いや昭和の初めくらいまで、こんな道具が普通に使われていたんでしょうね。

 この食感を知らずにいたわけです。現代の私たちは。

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 と、考えるとあれこれ想像が広がります。

 古道具に限らず、古民家、古着、昔の習慣・・・
 
 「過去のしろもの」というのは、現代のものと同じ用途で使われていても、私たちに与える(感覚的)影響はまったく異なるものではないでしょうか?

 そういえば思い出しました。

 18の頃かな〜、一人で奥深い山へ登るとき一泊目は営林署の小屋に泊めてもらいました。

 そこの留守役をしていた爺さんが、まきで昔の木風呂をたいてくれました。

 「まきでたいた風呂は柔らかくて全然違うから」と爺さんが話してくれたんですが、実際そのとおり!

 そんなデリケートなことなど無頓着な青春時代真っ只中の私でしたが、そのお湯の柔らかさにびっくりしました。

 その後いろりの自在鉤につるされた「きのこ鍋」もいただきましたが、こんなおいしいものも初めてでした。

 きっと、材料のよしあしだけではなくて、まきや鉄鍋で調理したから格別の味が出たのでしょう。

 過去とかレトロとかいうものは過ぎ去った古いもの、価値の低いものではなくて、時代の流れには関係ない「独創品」であることにあらためて気づかされます。