衝撃!黒澤明「赤富士」

 忘れたい、もう無いことにしたい、どうせ前とおんなじさ。。。今、原発、放射能に対する私たちの偽らざる心境ではないでしょうか?

(黒澤明監督『夢』の一篇「赤富士」より)

 「いつまでも悲観的なことを言っていたら、福島復興の妨げになるぞ!」

 「世界中が怖れてオリンピックも開けなくなるぞ!」

 「誰も死んでないだろう?」

 「これだけの事故を起こして、これだけ厳しい検査に変わったのだから、今後の原発は絶対安全だ!」

 「現実を見ろ!核兵器を作る能力を失えば日本は侵略されるぞ!なめられるぞ!」

 「経済が失速したらどうするんだ。デフレから脱却できなくていいのか!」

 目に見えない放射能、意図的な?小出しのニュースにだんだん感覚が麻痺していく私たち。

 もう考えても仕方ない、政治にはもう何も変化を期待できない。。。と、あきらめる私たち。

 カルトのように思われはしないか、心配しすぎじゃないか。。。と、弱気になる私たち。

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 多かれ少なかれ、一年前よりも怒りや恐怖の度合いが低くなってしまった私たちです。

 そんな今、西に住む友人からメールが来ました。

 そこには一つのリンクアドレスが書いてありました。

 『黒澤明 死して15年 直筆ノートにあった"メッセージ"』

 9月20日テレビ朝日「報道ステーション」で放送された映像でした。

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 この動画を見て、私の気持ちは1年前にリセットされました。

 なんて人間は愚かなのだろう。

 愚かであることを自覚しないという、そのことが。

黒澤監督の直筆ノート(1985〜86年)より

人間は間違いばかり起しているのに、
これだけは絶対間違いは起さないなんて
どうして云えるだろう。
それも、もし間違ったらおしまいだと云うのに、
どうしてそんな事が云えるんだろう。

高い木に登って、自分のまたがってる木の枝を
一生懸命切っている阿呆に似ているね。

猿は火を使わない。
火は自分達の手に負えない事を知ってるからだ。
ところが、人間は核を使い出した。
それが、自分達の手に負えないとは考えないらしい。
火山の爆発が手に負えないのわかっているのに
原子力発電所の爆発ならなんとかなると思ってるのは
どうかと思うね。

「原発は安全だ」
「危険なのは操作のミスで
原発そのものに危険はない」
「絶対ミスは犯さないから問題はない」
ってぬかした奴等許せない。

原子力発電が安全だなんて云っていた奴等は、
今、どうしてやがるんだろう。
そいつ等の顔が見たいね、全く!

 私は10年くらい前にテレビで黒澤明監督『生き物たちの記録』を観ました。

 そのとき衝撃を受けたとはいえ、数十分後にはケロッと忘れてしまう程度のものでした。

 ところが今回、一部の映像ではありますが、『赤富士』と一緒に観たら恐怖が背筋に伝わってきました。

 「人間は愚かなことをする生き物だ。だから危険なものを持ってはいけない」

 危険というよりも「破滅壊滅全滅」というべき「原子力」「核」。

 決して楽観的に考えてはいけないことです。

 決して危険な可能性から目をそらしてはいけないことです。

 決して反対をあきらめてはいけないことです。

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 『赤富士』で叫ぶ母親のセリフがいつまでも耳に残ります。

 「大人は十分生きたからいいかもしれない。だけどこの子らはまだいくらも生きていないんだ!」