「短編画廊」ホッパーの絵、小説となる

 現代アメリカの名だたる作家17人が、それぞれ選んだエドワード・ホッパーの絵を題材にして物語を紡ぎました。(私が知っているのはスタンド・バイ・ミーやキャリーで有名なスティーブン・キングだけでしたが。。。)

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 実に面白い短編集でした!頂き物の高級菓子を少しづつつまむように毎日数篇づつ読んでおりました。読み終わった今、甘美な味や香りから覚めやらぬまま空の菓子箱を眺めているような、そんな寂しい気持ちを味わっています。

 ホッパーの絵はどれを見ても実に静かです。描かれている人物はだれもが秘密を抱えているように見え大変ミステリアスです。絵には寂寥感や虚無感が強く漂っています。にも関わらず、直線的でダイナミックな構図や独特な色使いに突き抜けたような爽快感があり、まさに「アメリカ」という感じがします。

 私はそんなホッパーの絵に魅せられ二冊の画集を持っておりました。時々開くたびに「いったいこの絵はどういうシチュエーションを描いたのだろう?」と引き込まれ、良質なサスペンス映画の結末を考えるような刺激を受けました。

 数週間前、新聞の書評欄に横尾忠則氏による「短編画廊」の紹介があり、すぐに買い求めました。買って良かった。。。 

book.asahi.com

 実は、私は今ほんとに少ししか本を読まなくなっています。歳をとると食が細くなり、本当に美味しいものを少しだけ味わいたいと思うのと一緒です。

 それで古い文学全集にのっている作品しか読まなくなったのですが、現代物でも珠玉の作品と偶然めぐり合うことがあります。数年前だとウイリアム・トレヴァーの短編集でしょうか。(日本で翻訳されているものはすべて読みました。何度も読み返しています)

 今回の「短編画廊」もそんな作品のひとつです。本当の映画を見ずとも、良質なサスペンス映画やハードボイルド映画をたっぷり味わうことが出来た気がします。きっと何度も読み返すことになると思います。

 なぜこんなブログを書いたかというと、私もホッパーの絵どれかで物語を紡いでみたいなと思ったからです。(いつになることやら)